交通事故の基礎知識

交通事故における逸失利益について解説

逸失利益とは? - 交通事故の慰謝料について知ろう!

交通事故の賠償において「逸失利益」という項目があることをご存じでしょうか。 日常生活ではなじみの薄い言葉ですから、保険会社から案内を受けたとしても、何を意味するものなのか、提示された金額が妥当なのか分からないことと存じます。

しかし逸失利益は、ときに慰謝料を大きく上回る金額となることもあり、交通事故における損害賠償の中核をなすものですから、正確に内容を把握していないと不当に低い金額での示談を迫られてしまいます。

本記事では交通事故専門の弁護士の視点から、逸失利益の内容や計算方法について徹底解説いたします。


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そもそも逸失利益とは?

後遺障害が残ってしまった被害者の方は、事故前と同じように働くことができず、ほとんどの場合働く能力を失ってしまいます。そのため、収入が大きく減少してしまう方もいることでしょう。  

このように失われた能力や収入は、「後遺障害が残らなければ、本来、得られるはずであった」ものですから、加害者は賠償する必要があります。  

また、交通事故で亡くなった方は、そもそも事故前のように収入を得る機会を奪われてしまっているため、「亡くならなければ、本来、得られるはずであった収入」についても、加害者に賠償の義務があります。  

以上のような、後遺障害や死亡という結果によって、本来得られたはずの収入(利益)が、「逸失利益」と呼ばれる損害項目なのです。

逸失利益の計算方法

精神的なダメージを賠償する慰謝料は、定額の基準が目安として用意されています。

しかし、逸失利益の場合は、失った能力や収入を補填するという性質上、同じ後遺障害を負っている被害者の方であっても、お仕事の内容や収入によって賠償額が大きく異なることになります(亡くなられた場合も、同様です。)。  

以上のような性質を踏まえ、現在の裁判実務では次のような計算式によって逸失利益を計算することとしています。

後遺障害逸失利益
①基礎収入額 × ②労働能力の喪失率 × ③労働能力の喪失期間   

死亡逸失利益
①基礎収入額 × ②(1-生活費控除率) × ③労働能力の喪失期間   

この式だけでは、具体的に逸失利益を計算するイメージがつきづらいことでしょう。そこで以下では、計算式における各要素や具体例を挙げた計算方法をご案内します。

後遺障害逸失利益の計算方法

後遺障害逸失利益の計算は、以下の通りです。

①基礎収入額 × ②労働能力の喪失率 × ③労働能力の喪失期間

それぞれの項目について、詳しく解説します。

基礎収入額について

基礎収入とは、逸失利益を計算する前提となる、被害者の方の労働能力(稼働能力)を数値化するものです。

本項では、被害者の属性に応じて代表的なものをご説明しますが、実態に応じて様々な考え方がある概念ですので、専門家と相談しながら検討すべきでしょう。

基礎収入額は原則、現実の年収額

基礎収入額は、被害者が有職者の場合は「1年間で稼ぐことのできた金額」、つまり現実の年収額が採用されます。

したがって、毎月給与を支給されている場合には源泉徴収票によって立証することとなり、事業を経営されている方であれば確定申告上の申告所得によって立証することになります。

(ご家族の協力を得ていた場合、申告所得のうち家族による稼働と評価される部分が控除されることがあります。)

また、現実の収入が証明することが出来ないケースでは、そのほかの資料から全労働者の平均賃金程度の収入は得られていたと考えられる場合には、その平均賃金額が採用されることもあります。

なお、平均賃金額は厚生労働省が実施している「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」に準拠しています。

家事や介護(主婦)も評価される

現実に収入がなくても、自分以外の家族のために家事や介護に従事している方は、その家事・介護があるからこそ、家族が就学・就業できると評価されます。

この場合には、全年齢の女性労働者の平均賃金額を基礎収入額とされます。

また、兼業主婦のように現実の収入を得ている方であっても、家事や介護に従事していれば、基礎収入額は全年齢の女性労働者の平均賃金として計算することができます。

ただし高齢の主婦の場合は、その実態に応じて基礎収入額を限定的に評価されることもあるので注意が必要です。

例えば、71歳の主婦について65歳以上の平均賃金が採用された、平成23年4月25日付・大阪地方裁判所の判決等があります。

就労していない場合の逸失利益

学生・幼児の場合

学生や幼児は一定の年齢に達することで就業することが通常ですから、男女別に全年齢の労働者平均賃金を用られます。

大学生については、大卒労働者の平均賃金が採用されるケースもあります。

ちなみに年少の女性については、女性労働者の平均賃金ではなく、全労働者(男女計)の平均賃金が採用されることがあります。

これは、現実には男女の平均賃金の格差が数年程度では埋まらないと考えられる一方、本来は男女平等社会であるべきで、将来的には男女の賃金格差が埋まる可能性があるとされるためです。

その他の無職者の場合

無職であるからといって、必ずしも逸失利益の前提となる基礎収入が認められないわけではありません。

例えば、退職・失業するなどして一時的に無職となっているに過ぎない場合には、就労の意思があることを立証することで、退職・失業前の収入額の一部や、平均賃金の一部が基礎収入として認められることがあります。

労働能力の喪失率について

喪失率は何を基準に定めているのか?

「基礎収入額」によって、被害者の方の労働能力が評価できたとして、後遺障害が労働能力をどの程度減少させているのでしょうか。

これは本来、後遺障害や就業の内容、現実の減収率なども勘案しながら総合的に判断せざるをえない問題です。

しかし裁判所は、将来得られたはずの損害を算出するという逸失利益の不確実さから、将来の減収は「被害者側にとって控え目な算定方法」によることが合理的であると考えてきました(昭和39年6月24日付の最高裁判所判決)。

そこで現在の裁判実務では、将来にわたって、より多くの減収が生じることについて、相当にその可能性が高いこと(「高度の蓋然性」といいます。)が証明されない限りは、一定の基準を用いて抽象的に逸失利益を計算することしています。

その基準とされるのが、労災保険において採用されている「労働能力喪失率表」(昭和32年7月2日付・基発第551号の通達)です。

等級

労働能力喪失率

等級

労働能力喪失率

1級

100%

8級

45%

2級

100%

9級

35%

3級

100%

10級

27%

4級

92%

11級

20%

5級

79%

12級

14%

6級

67%

13級

9%

7級

56%

14級

5%

職業によって大きな喪失率が認定されることも

「被害者側にとって控え目な算定方法」を採用する裁判実務においては、労働能力喪失率表の影響は大きく、たとえ実際の減収が大きくとも、それが将来にわたってまで続く可能性は必ずしも高くないとして、表の割合どおりの認定がされてしまうケースが圧倒的に多いといえます。

但し、例外がないわけではありません。

特に、後遺障害が実際に従事されている仕事に必要とされる技能や効率の低下に直結するような事案において、転職が困難か、転職によっても収入が回復しないと見込まれる場合には、基準値を超える喪失率を認めた裁判例もあります。

裁判例1
右腕の痺れ等によって第14級が認定されたピアノ講師につき、10%の喪失率を認めた判決(平成12年11月20日付の神戸地方裁判所判決)

裁判例2
右肩の可動域制限等によって第12級が認定された鍼灸師につき、20%の喪失率を認めた判決(平成16年12月21日付の東京地方裁判所判決)

減収が生じていない場合

喪失率表の基準値より低い割合でしか減収していない場合や、減収自体が生じていない場合でも、やはり「控え目な算定方法」が採用されるため、基準値を下回る喪失率しか認められなかったり、場合によっては逸失利益の発生自体が否定されてしまうことがあります。

しかし一方で、被害者の方や周囲の方々の努力によって減収が抑えられている例もあります。

このような場合にまで労働能力の喪失率を低く認定してしまうと、被害者が努力をしたことによって、賠償金額が下がってしまうという本末転倒な事態が生じかねません。

また、減収は生じていないとしても配置転換によって被害者の方が希望していた職種には従事できなくなったり、処遇上は不利益な扱いを受けるなどの場合に、将来的にも労働能力が失われていないとは言い切れません。

したがって、このような事情が明らかにされれば、一定の労働能力の喪失が認定されることもあります。

裁判例1
後遺障害併合第11級に相当する公立高校教諭(公務員)につき、減収はないものの、教材を持って教室間を移動する際に他の教師の助けを借りたり、クラブ活動の引率や担任クラスを持つことができないことなどから、人事評価にも影響があるとして、20%の喪失率を認めた判決(平成25年2月14日付の京都地方裁判所判決)

裁判例2
後遺障害第12級が認定されたバスの運転手につき、現段階では減収が生じていないものの、希望していた運転業務には就労できず、関連会社に異動し、まったく別の業務を行うこととなったことから、処遇上も不利益があるとして、14%の喪失率を認めた判決(平成21年2月27日付の名古屋地方裁判所判決)

労働能力の喪失が認められにくい後遺障害

後遺障害の内容によっては労働能力の喪失が認められなかったり、限定的にしか認められない場合もあります。具体的にいくつかご紹介します。

醜状障害
醜状障害とは、やけど痕や、手術の縫合痕など、「醜いあと」が残ってしまった場合に認められるものです。例えば、顔面のうち髪や眉で隠れない位置に3cmの線状痕が残った場合は、第12級に該当するとされています。

醜状障害の逸失利益については、「傷痕が残ったとしても、身体が自由に動くのであれば、被害者の方の身体能力には何ら影響がない」などとして、労働能力の喪失率が激しく争われがちです。

しかし平成14年には、当時の東京地方裁判所において交通事故専門部の統括判事を務めた河邉義典氏が、以下のように述べています。

醜状障害によって「配置転換させられたり、職業選択の幅が狭められるなどの形で労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれ」がある場合には、一定の労働能力の喪失を認めたり、そのような直接の影響がなくとも、「対人関係や対外的な活動に消極的になるなどの形で間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれ」がある場合には、逸失利益は認めないものの、慰謝料を増額することがある

引用元:東京三弁護士会交通事故処理委員会創立40周年記念講演

その後、厚生労働省が主体となって専門家の間で検討された際も、特に顔面部などの醜状について、以下のように報告されました。

「就業制限、職種制限、失業、職業上の適格性の喪失等の不利益をもたらし、結果として労働者の稼得能力を低下させることは明らか」

引用元:外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会報告書

したがって、以上のような事情が認められるようなものであれば、一定の労働能力喪失率が認められたり、逸失利益を認めない代わりに慰謝料が増額されるといった賠償を獲得できることがあります。

歯牙障害

「歯牙障害」も、労働能力の喪失が比較的否定されやすい類型です。確かに、インプラントやブリッジ治療によって欠けた歯が補綴された場合、労働能力にどの程度の影響を与えるかについては、個別に検討せざるをえないでしょう。

但し歯牙障害の場合には、将来インプラントやブリッジによる治療を何度か実施しなければならないケースもありますから、例外的に将来必要となる治療費が賠償として認められるケースがあります。

また、鎖骨が外見からも変形してしまっていることが把握できる場合(第12級5号)や、手足の長管骨が変形してしまった場合(第12級8号)にも注意が必要です。

骨の変形こそ認められても、その変形が、身体機能にどのように影響を与えているか定かではない場合、より下位の等級と同等のものと評価されてしまうことがあるからです。

労働能力の喪失期間

「基礎収入額」に「労働能力の喪失率」を掛ければ、被害者が1年間でどの程度の能力・収入を失ったものか判断できることになります。しかし、最終的に逸失利益の金額を決定するためには、こうして得られた1年あたりの喪失が何年分賠償されなければならないのかを決する必要があります。

そこで、労働能力の「喪失期間(年数)」が問題となります。なお、喪失期間は、症状固定時(症状の回復が期待できないと判断された時期)を基準に決定します。

喪失期間はどのように考えられているか

原則・症状固定時から67歳までの年数
現在の裁判実務では、原則として67歳までは継続して就労できると考えられています。したがって、症状固定時の年齢から67歳に至るまでの年数が、原則的な労働能力の喪失期間とされています。

例えば、30歳で症状固定となった方の場合は、労働能力喪失期間は37年間ということになります。

高齢の方の場合は、平均余命の半分の年数
現実には、67歳を超えても仕事や家事をされている方は少なくありません。

そこで裁判実務においては、被害者の方がご高齢の場合には、症状固定時における男女別の平均的な余命をもとに、その余命年数の半分の期間は就労できたものと扱っています。  

したがって被害者が高齢の場合、「症状固定時から67歳までの年数」と「症状固定時の平均余命の2分の1にあたる年数」のうち、長期の年数が労働能力の喪失期間とされます。

例えば、症状固定時に70歳であった女性(主婦)の場合、平均余命が20年であるならば、その半数である10年間は主婦業ができたであろうと考え、労働能力喪失期間を10年とすることになります。

なお、平均余命は、厚生労働省が実施する「生命表統計調査(簡易生命表)」を用いる例が多いようです。

学生・幼児等の未就労者は、未就労期間を控除
まだ就労すらしていない方の逸失利益については、未就労と考えられる期間を控除しなければなりません。

例えば、症状固定時15歳の中学生であれば、67歳に至るまでの年数は52年です。しかし、実際に就労するのが18歳からであると考えるのであれば、15歳から17歳までの3年間、減収を認める余地がありません。  

そこで、この場合には52年から3年を控除した、49年間を労働能力喪失期間とすることになるのです。  

なお、このように、未就労期間を控除する場合には、後に説明するライプニッツ係数との関係でも注意が必要になります。

喪失期間に関する実際 ~神経症状を例に~
以上年数が労働能力の喪失期間の上限となりますが、実際の裁判実務・保険実務においては、この期間を目安としつつ、後遺障害の内容や減収の状況などを勘案して、具体的に喪失期間を決しています。

特に、むち打ち症やこれに類する打撲・捻挫等によって痛みや痺れが残ってしまう「局部の神経症状」と呼ばれる後遺障害では、目安であるとはいえ喪失期間を大きく限定する基準が用意されています。

等級

労働能力喪失期間の目安

第12級の神経症状

5~10年程度

第14級の神経症状

2~5年程度

但し、神経症状が回復しない骨折によって生じていたり、多数箇所の神経症状が認定されている場合などには、やはり実態に応じて具体的な検討がされることとなります。

ライプニッツ係数・中間利息控除とは

実際に逸失利益を計算する際には、労働能力喪失期間をそのまま乗じるわけではありません。

保険会社から逸失利益を提示された場合、計算式には労働能力喪失期間に対応する年数の代わりに、「ライプニッツ係数」と呼ばれる数字が掛けられています。

逸失利益は将来生じるであろう減収に対する賠償が一括して支払われるというものですので、被害者の方には、将来分を先に受け取る分だけ運用上の利益(中間利息利益)があると考えられています。

そのため裁判実務においては、逸失利益を計算する際、中間利息を控除することとしています。この中間利息を予め控除した係数が、「ライプニッツ係数」と呼ばれるものです。

例えば、労働能力喪失期間が5年であれば、以下の表にしたがい1年間の減収額に「4.329」を乗じることとなるのです。

労働能力
喪失期間

ライプニッツ係数

労働能力
喪失期間

ライプニッツ係数

1年

0.952

10年

7.722

2年

1.859

15年

10.380

3年

2.723

20年

12.462

4年

3.546

30年

15.372

5年

4.329

40年

17.195

なお、学生など未就労期間を控除する必要がある場合、ライプニッツ係数を用いて控除することとされています。

例えば、先に挙げた15歳の中学生が、第12級の神経症状によって10年間、能力を喪失するとした場合には、次のとおり計算します。

7.722(10年対応の係数)-2.723(3年対応の係数)=4.999

後遺障害逸失利益の計算例

今までの説明を踏まえ、具体例を交えて実際に後遺障害逸失利益を計算してみましょう。

【設例】 
Aさんは19歳のときに症状固定となり、後遺障害第7級が認定された男子大学生です。裁判での審議の結果、労働能力の喪失期間は30年程度とされそうです。Aさんの逸失利益はどの程度の金額になると見込まれるでしょうか。

基礎収入額

Aさんが男子大学生であることから、大卒男性の平均賃金を得られたであろう可能性が高い場合には、これを採用すべきでしょう。平成29年の賃金センサスによれば、大卒男性の平均賃金は約660万円です。

労働能力の喪失率

後遺障害等級7級の場合、労働能力の喪失率は56%とされています。

労働能力の喪失期間

大卒の平均賃金を採用した以上、就労開始時期は22歳となりますから、19歳から21歳の3年間は未就労時期として控除しなければなりません。

したがって、15.372(30年対応のライプニッツ係数)から、2.723(3年対応のライプニッツ係数)を控除した、「12.649」を乗じればよいことになります。

したがってAさんの後遺障害逸失利益は、次のとおりとなります。

6,600万0,000円 × 0.56 ×12.649 = 4,675万0,704円


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死亡逸失利益の計算方法

死亡逸失利益の計算においても、基礎収入額と労働能力の喪失期間については、基本的には後遺障害逸失利益の計算方法と同様の考え方が採用されています。

以下では、死亡逸失利益の計算方法における生活費控除についての考え方を解説します。

死亡逸失利益における生活費控除

生活費を控除することの意味

亡くなってしまった以上、生前得ていた収入はすべて失われるので、労働能力の喪失率は1100%となるはずです。

しかし、実際に被害者の方が生存していた場合、生活費も支出しなければなりません。つまり、亡くなった被害者の方の収支においては、「収入を失ったと同時に、生活費の支出も免れた」という考え方が成り立ちます。

したがって死亡逸失利益においては後遺障害の場合と異なり、収入から生活費を引いた金額が賠償の対象としています。

具体的には、収入の100%から、一定の割合を生活費から控除して逸失利益を計算することとしています。

生活費控除率の基準

もっとも、食費や衣類など生活必需品といいつつも嗜好品の側面を有する出費があります。また、亡くなった方の生前の生活収支を厳密に特定するにあたっては、資料が欠けているケースがほとんどです。

そのため、収入からどの程度の生活費を控除すればよいのかということを、生活の実態から計算することは困難を伴うのが通常です。

そこで裁判実務においては、亡くなった方の属性ごとに生活費の控除率に基準を設けることとなりました。具体的には、以下のとおりです。

被害者の属性

生活費控除率

備考

一家の支柱

30%~40%

生前扶養していた人数が多いほど,控除率は低い傾向にあります。

一家の支柱以外の女性

(主婦を含む)

30%

 年少女子の逸失利益を計算するにあたって,男女を合わせた平均賃金を採用する場合は,40~45%とされます。

その他(独身男性など)

50%

もちろんこれらの基準も絶対のものではありませんが、有利な控除率に修正してもらうためには客観的に、且つ相当具体的に収支を立証しなければなりませんので、まずはこちらの基準に沿って見通しを立てることとなります。

死亡逸失利益特有の問題

年金を受給している方が亡くなった場合には、後遺障害と異なり、年金収入部分も逸失利益に参入する必要があります。亡くならなければ、これまでどおり年金を受給できたはずですから、当然のことといえましょう。

もっとも、年金のみを受給しているのみで無職の方は、年金のほとんどを生活費に充てている可能性が高いといえますから、先に掲げた逸失利益の基準よりは生活費の控除率が高くなる傾向にあります。

但し、年金収入以外にも十分な収入が認められる方であれば、通常の基準を出発点にして交渉を開始してよいでしょう。

なお、年金は生存している限り受給できますから、それ以外の収入部分と異なり、平均余命までの全期間において請求できます。

死亡逸失利益の計算例

それでは最後に今までの説明を踏まえ、具体例を交えて実際に死亡逸失利益を計算してみましょう。

【設例】  
Bさんは70歳の男性で、独り暮らしです。 Bさんは、パートアルバイトによって年収200万円ほどの収入を得ているほか、年額で70万円の年金を受給していました。 Bさんの逸失利益はどの程度の金額になると見込まれるでしょうか。

アルバイト収入部分について

基礎収入額が200万円となり、生活費控除率は50%となります。そして、70歳男性の平均余命は15.7歳ですので、その半分の期間、即ち約8年間はアルバイトによって収入を得ることができたと考えられます。

そこで、8年対応のライプニッツ係数である「6.463」を乗じればよいことになります。したがって、アルバイト収入部分の逸失利益は次のとおり計算されます。

200万 × (1-0.5)× 6.463(8年対応のライプニッツ係数)=646万3,000円

年金収入部分について

基礎収入額は70万円となります。生活費控除率については他に収入もあったため、ひとまずはアルバイト収入と同様、50%と考えて見通しを立てます。

アルバイト収入部分と異なり15年間受給できたはずですので、15年対応のライプニッツ係数である、「10.38」を乗じればよいことになります。

したがって、年金収入部分の逸失利益は、次のとおり計算されます。

70万 ×(1-0.5)× 10.38(15年対応のライプニッツ係数)= 363万3,000円

計算結果   

以上より、Bさんの死亡逸失利益はアルバイト収入部分が「646万3,000円」、年金収入部分が「363万3,000円」となり、合計1,009万6,000円となることが見込まれます。

最後に

以上のとおり、逸失利益は高額になる可能性がある一方、大きく金額が変動しうるものですので、保険会社との交渉や裁判においても激しい争いが展開される項目です。  

裁判所も将来生じるはずであった利益という不確実性から、逸失利益の算定を長らく「控え目」に扱ってきました。

そのため適切な金額の逸失利益を回収するためには、被害者の方やそのご親族と、交通事故に長けた弁護士とが協力し、充実した立証を図っていくことが不可欠です。

特に後遺障害における逸失利益においては、事故後の就業に与える支障の程度や、支障が生じる期間について、医学的なアプローチによる立証が要求されることがあり、非常に複雑・高度な交渉・立証能力が要求されます。

したがって、逸失利益についての見通しや立証の方針、回収の交渉については、早期に交通事故の取り扱い実績が多い弁護士に相談されることを推奨いたします。

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