後遺症

耳の後遺障害-部位ごとの後遺障害を解説

耳の後遺障害 – 後遺障害の種類を解説

交通事故による怪我が原因で、周囲の音が聞こえにくくなったり、耳鳴りがしたりといった症状が出ることがあります。聴力を始めとする耳の機能は日常生活においてなくてはならないものですから、このような症状が残った場合「後遺障害」としての認定を受け、適切に賠償金を請求していくことが必要です。

しかし、耳の機能に関する後遺障害を認定してもらうためには、耳の機能に対して障害を生じさせるような怪我をしたことを医学的に証明する必要があり、治療中の段階から準備すべきこともあります。

自賠責保険の等級認定基準においては、①聴力障害(聴力の喪失・低下)や②耳鳴のほか、③耳漏、④耳殻(耳介とも呼ばれる、顔の外に露出している「耳」の部分)の欠損障害があります。

本稿では、以上のうち、特に「①聴力障害」や「②耳鳴り」を重点的に解説してまいります。これらは、耳の後遺障害のなかでもご相談を受ける機会が多く、認定基準も複雑で、色々な準備が必要になるからです。

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聴力の後遺障害

聴力障害によって等級を認定してもらうためには、あらかじめ必要な検査を把握し、準備しておくことが重要です。聴力の後遺障害は、「純音聴力」と「最高明瞭度」によって、その程度が区別されます。

したがって、これらを検査によって測定しておく必要があります。 以下では、後遺障害の等級認定に必要な検査を説明した後、その検査結果を踏まえて、どのように等級が認定されるのかを順に説明してまいります。

聴力に関する検査

平均純音聴力検査

検査内容
聴力の低下(喪失)には、外耳から内耳までの聴覚系に原因のある「伝音性難聴」と、内耳よりも内側の感音系に原因のある「感音性難聴」とがあります。

前者については、鼓膜を通じて聞き取る能力を確認する「気導聴力検査」によって測定します。後者は、鼓膜よりも奥に原因があるため、内耳にある蝸牛という器官を通じて、骨(頭蓋骨)の振動から音を聞き取る能力を確認する「骨導聴力検査」により測定します。

実際に聴力に異常がある場合は、伝音性・感音性が混在していることもあるので、これらの検査は両方とも実施しておく必要があります。

いずれも「オージオメーター」を利用した一般的な検査で、両者を併せて「純音聴力検査」といいます。耳の後遺障害の認定を受けるためには必須の検査となります。

等級認定用の測定方法
自賠責保険の基準では、6分法による「平均純音聴力」が採用されます。

これは、A=500ヘルツ、B=1000ヘルツ、C=2000ヘルツ、D=4000ヘルツの4種類の周波数レベルにおける各純音聴力を測定し、(A+2B+2C+D)÷6によってこれを平均化したものです。

また、この検査は最低でも3回実施し、2回目と3回目の平均値を採用することとされています。

測定結果の読み方
純音聴力検査によって、「何dB(デシベル)以下の音まで聞き取れるのか」が確認できます。検査結果は「dB」で記録され、たとえば「50dB」とされれば、「50dB以上の音しか聞き取れない」ということを意味します。 なお、測定結果を記録する「オージオグラム」は、次のようなルールによって結果を表記しますので、参考にしてください。

 

右耳

左耳

気導聴力検査

〇・実線

×・破線

骨導聴力検査

検査の時期
事故後、早い段階で純音聴力検査の結果を残しておかなければ、後々、事故と聴力障害との因果関係が争われることがあります。したがって、まずは、可能な限り早期に、これらの検査を受けておきましょう。

また、先にご説明しましたとおり、後遺障害の診断時に、この検査を3回以上受ける必要があります。

しかも、これら3回の検査は、7日以上の間隔を空けて実施される必要があります。後遺障害の等級認定に用いられるのは、2回目と3回目の測定結果の平均となりますが、これらの測定値の差が10dB以上になる場合には、さらに追加の検査が必要になります。

したがって、後遺障害の認定にチャレンジする場合には、計画的にこれらの検査を実施していく必要がありますので、ご注意ください。

最高明瞭度の測定(語音聴力検査)

検査の内容
純音聴力は音を聞き取る能力ですが、明瞭度は「音の聞こえ方」や、「音を聞き分ける能力」を意味します。この明瞭度は「語音聴力検査」によって測定します。具体的には、複数の発音について聞き取ることのできる音量を測定する「語音聴取域値検査」と、聞き取った音を紙に書き写して正誤を確認する「語音弁別検査」を実施してもらうことになります。

測定時期や測定結果の読み方
こちらの検査は純音聴力検査と異なり、3回の検査が必須とされているわけではありません。したがって、認定手続においては、原則として症状固定時期の検査結果があれば問題ありません。

なお、測定結果を記録する「スピーチオージオグラム」には、音の大きさごとに、次のようなルールによって明瞭度を表記していますので、参考にしてください。

 

右耳

左耳

語音聴取域値検査

〇・破線

×・破線

語音弁別検査

〇・実線

×・実線

他覚的聴力検査

純音聴力と最高明瞭度は、いずれも、患者の自己申告を記録する検査であるため、実際のところ、「自覚症状」と大差はありません。

そこで、以上のような検査に加えて、患者の意思ではコントロールできない測定結果を求める「他覚的検査」が重要になります。 いくつかの候補がありますが、自賠責保険側から追加検査を要求されることもあるのが、「聴性脳幹反応(ABR)」と、「あぶみ骨筋反射(SR)」です。

前者は、検査音を聞いたときに、頭皮上に設置した電極を通じて、音刺激を受信したときに発せられる脳波を記録するものです。特に、純音聴力検査や語音聴力検査が難しい(自覚症状を伝えられない)乳幼児には有効とされます。

後者は、耳小骨に付着する筋肉が、大きな音を感知したときに内耳を守るため、収縮する反応を確認するものです。

これらのほかにも、類似する検査がありますが、いずれも患者の意思とは無関係に結果を得られることから信用性が高く評価されます。事前に医師と相談し、いずれかの検査を実施していただき、後遺障害診断書にも検査結果を添付してもらうべきでしょう。

聴力に関する後遺障害等級

聴力に関する後遺障害等級は、かなり細かく区別されています。 既に説明した平均純音聴力と最高明瞭度の値によって認定される等級が決定されます。 以下では、「両耳に聴力障害が残った場合」と「1耳に聴力障害が残った場合」とに分けて案内していますので、参考にしてください。

両耳に聴力障害が残っている場合

等級

基準(平均純音聴力)

第4級3号

両耳の聴力を全く失ったもの

・両耳が90dB以上のもの

・両耳が80dB以上で、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの

第6級3号

両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

・両耳が80dB以上のもの

・両耳が50db以上80db未満で、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの

第6級4号

1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

・1耳が90dB以上で、かつ、他耳が70dB以上のもの

第7級2号

両耳の聴力が40cm以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの

・両耳が70dB以上のもの

・両耳が50dB以上で、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの

第7級3号

1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

・1耳が90dB以上で、かつ、他耳が60dB以上のもの

第9級7号

両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度に至ったもの

・両耳が60dB以上のもの

・両耳が50dB以上で、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの

第9級8号

1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難であるとなった程度

・1耳が80dB以上で、かつ、他耳が50dB以上のもの

第10級5号

両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの

・両耳50dB以上のもの

・両耳が40dB以上、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの

1耳に聴力障害が残っている場合

等級

基準(平均純音聴力)

第9級9号

1耳の聴力を全く失ったもの

・1耳が90dB以上のもの

第10級6号

1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

・1耳が80dB以上90dB未満のもの

第11級6号

1耳の聴力が40cm以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの

・1耳が70dB以上80dB未満のもの

・1耳が50dB以上で、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの

第14級3号

1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

・1耳が40dB以上70dB未満のもの

ご参考・等級認定早見表
1耳と他耳との聴力レベルの組合せによる認定基準一覧表

1耳と他耳との聴力レベルの組合せによる認定基準一覧表

ⅱ 両耳の聴力レベルと最高明瞭度との組合せによる認定基準一覧表
両耳の聴力レベルと最高明瞭度との組合せによる認定基準一覧表

ⅲ 1耳の聴力レベルと最高明瞭度との組合せによる認定基準一覧表

1耳の聴力レベルと最高明瞭度との組合せによる認定基準一覧表

耳鳴(じめい・みみなり)の後遺障害

耳鳴りとは、音源もないのに、脳や耳の器官が音を感じ取る症状を総称するものです。 就寝時など、静かになったときにだけ不快な継続音を自覚し、睡眠を妨げるといった相談を多くお受けします。重篤なものは日中でも常時耳鳴りを感じることもあります。

耳鳴りの後遺障害等級

「難聴を伴う常時耳鳴」には以下のとおりの等級が認定される運用がはかられています。 いずれも「難聴を伴う」、「常時」耳鳴を残すものであることに注意が必要です。

「難聴を伴う」とは、聴力障害の認定基準である40dBを満たさない程度であってもよいのですが、それに満たない聴力低下は立証する必要があります。

耳鳴りを「常時」残すとはミスリードですが、日中は自覚症状がなくとも、夜間や就寝時、静かになると耳鳴りを自覚するようになるような場合も含むとされます。

等級

備考

第12級相当

耳鳴に係る検査によって難聴を伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるもの

第14級相当

難聴を伴い常時耳鳴のあることが合理的に説明できるもの

認定と検査

耳鳴りに限らず聴力障害でもそうですが、耳の機能に障害が生じることが、医学的に説明できなければ、事故との因果関係は認めてもらえません。

第14級にいう「合理的に説明できるもの」もこの意味であり、事故によって、耳の器官やその近似する場所、耳に関連する脳神経が損傷していたとしても不自然でない程度の怪我の存在が必要になります。

例えば、耳付近の骨折や脳内の出血が典型例です。場合によっては耳を強打したことが医療記録から明らかなケースなども認定を狙うことができます。 第12級は、「著しい耳鳴」に対し認定されますが、これは、その耳鳴りが説明可能であるにとどまらず、医学的に証明できること、つまり、検査によって耳鳴りの存在が裏付けられたものをいいます。

具体的には、複数の周波数の音を聞き、自覚する耳鳴りに近い音を特定する「ピッチ・マッチ検査」を経て、この検査によって特定した音を流し、どの程度の大きさで聴こえるかを確認する「ラウドネス・バランス検査」を実施することになります。

この検査によって耳鳴りがあると主治医が評価した場合には、第12級の等級認定を狙うことになります。 なお、40dB未満でよいとはいえ、難聴を伴うものが認定の対象ですから、先にご説明した純音聴力検査の結果も提出する必要がある点に注意してください。

耳漏(じろう・みみだれ)の後遺障害

耳漏とは、鼓膜など耳内の器官に傷がついたことで、外耳道から排液が漏出するものをいいます。 認定対象となるのは、「外傷性穿孔による耳漏」であり、事故によって鼓膜に穴の空いたことが原因で生ずるものです。

傷ついた器官を手術により治療できる場合、排液の漏出を防ぐことのできるケースもありますから、手術的処置を施した場合であっても症状が残っていることが必要です。

したがって、後遺障害診断書には、「手術によっても排液の漏出がなお残ったこと」か、「手術による回復は困難であること」を記載してもらわなければ等級の認定は難しいと考えられます。

なお、外傷によって耳道にダメージが達するものの、耳漏が出ないケースもあります。その場合であっても、外耳道が高度に狭窄されていれば、等級認定の対象となります。

等級

備考

第12級相当

常時耳漏を残すもの

第14級相当

耳漏を残すもの

第14級相当

外傷による高度の外耳道狭窄で耳漏の伴わないもの

 

耳殻(耳介)の欠損障害

耳殻欠損の後遺障害等級

1耳の耳殻(耳介)の大部分を欠損したものが、後遺障害第12級4号となります。 耳殻とは、顔の外側に突出している、一般に「耳」と呼ばれている部分(耳殻軟骨部)です。大部分を欠損とは、この部分の2分の1が欠損してしまうことを指します。

なお、等級は1耳毎に定め、両耳が欠損した場合は併合等級となります。 

等級

備考

第12級4号

1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

1耳の耳殻軟骨部の2分の1を失ったもの

外貌醜状障害との競合

外貌醜状障害も問題となる場合は、いずれか高い方の等級が認定されることになります。 たとえば、「耳殻の大部分の欠損」は、耳殻の欠損障害としては、上記表のとおり第12級4号に該当します。

しかし、これは同時に、外貌醜状障害における「外貌に著しい醜状を残すもの(第7級12号)」にも該当します。 したがって、このような場合に認定を検討すべきは第7級となりますが、これは耳の後遺障害のみを確認するだけでは分からないことですから、注意が必要です。

内耳の平衡機能障害

以上のような等級のほか、耳内の器官が損傷・震盪することにより、平衡機能(左右で体のバランスを取る能力)に障害が生ずることがあります。眩暈や眼振を伴うこともあり、必ずしも耳のみが原因ではないため、平衡機能障害は神経系統の障害と位置付けられます。

そのため、本稿では詳しく触れておりませんが、耳の怪我によってふらつき等が出た場合は、この平衡機能障害が疑われますので、すみやかに主治医と弁護士にご相談ください。

なお、神経系統の障害として位置づけられていることから、耳の後遺障害とは両立的に認定され、それぞれの等級が併合されることになります。

さいごに

以上、ご説明してまいりましたとおり、耳の後遺障害の等級認定は、準備の段階から相応の知識が求められます。

また、自賠責保険における後遺障害等級の認定基準・運用を熟知している専門家からは、耳の後遺障害の等級獲得が難しいと見込まれるケースも多くあり、そのような場合には労災保険の障害等級認定や、裁判手続における認定なども検討しなければなりません。

耳の症状に悩まされていたり、今後の治療にご不安を感じられたならば、後遺障害の認定も見据えての方針を検討する必要がありますので、どうぞお早めにご相談ください。

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