後遺症

骨盤・股関節の後遺障害

交通事故において、骨盤・股関節を打ち付け、怪我を負ってしまった場合には、骨盤・股関節に症状が残ってしまうことがあります。

骨盤には、消化管や泌尿器系・生殖器系の臓器、動静脈や多数の神経が密集する大切な部位です。骨盤・股関節を受傷することにより、立つ・歩く・階段を昇る等の日常生活上の動作に多大な支障が生じることがあり、そのような障害が残っているのであれば適切な賠償を求めていかなければなりません。

ところが、骨盤・股関節の症状は、事故との関係性(因果関係)を証明したり、後遺障害の認定を得るにあたって、低くないハードルがあります。そこで、本稿では、骨盤・股関節に関して想定される後遺障害と、その認定基準について解説いたします。

事故により骨盤・股関節に症状が生じてしまった被害者の方が、どのような点に気を付ける必要があるのか、参考にしていただければと存じます。

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骨盤・股関節の後遺障害について

複数種類の後遺障害を検討すべきこと

交通事故において、骨盤・股関節を負傷することは少なくありません。具体的には、骨盤骨折や股関節脱臼等の怪我を負うことが多いです。

骨盤・股関節が骨折した場合には、固定具で固定する保存療法で済む場合もあれば、プレートで固定するための手術をすることもあります。

また、腹腔、骨盤内臓器、血管、神経の損傷等の他の周辺部位も損傷することもあります。

骨盤・股関節骨折になった場合には、①変形障害、②可動域制限、③股関節の動揺関節、④神経症状(痛み、しびれ等)⑤正常分娩困難(女性特有)等の複数種類の後遺障害を想定する必要があります。

画像所見の重要性

なお、上記各後遺障害に該当するためには、原則、後遺障害が残る原因となる異常【例 骨癒合不良(骨折部が元通りに突っつかない)等】が、レントゲン・MRI画像により、客観的に発見できることが必須になります。

このことを、「画像所見(ないし他覚所見)がある。」といいますが、この所見を獲得しておくことが、後遺障害に該当するための入り口になりますので、骨の異常が画像に映っているかどうか、医師に確認しておきましょう。

以下では、画像所見があることを前提に、各後遺障害を説明していきます。

骨盤・股関節の変形障害の後遺障害について

骨盤・股関節骨折などの治療が終わり、患部の痛み等は、消失したにもかかわらず、骨折部分がきれいにくっつかなかった等の理由により、骨盤・股関節周辺の一部が突出してしまったり、凹んだようになったりすることがあります。

このような場合には、変形障害にあたるかどうかを考える必要があります。 骨盤・股関節の変形障害に関する後遺障害等級は、次のとおりです。

第12級5号

鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

「著しい変形」とは、裸になった場合に外形的に確認することができる程度に変形していることを指します。 具体的には、被害者の方が裸になった場合に、骨盤・股関節部分の骨折患部が、飛び出して膨らんでいる、又はその逆に、患部が凹んでいることが、明らかになっていることが必要になります。

骨盤・股関節の骨折患部に、変形が生じていないのか、医師の視覚検査により確認することになります。

股関節の可動域制限の障害

股関節の可動域制限の後遺障害の認定基準

骨盤は、大腿骨(足の付け根からひざまでの太ももの骨をいいます。)とつながる「股関節」と隣接しています。したがって,股関節の機能にも注意する必要があります。

交通事故により骨盤が骨折し、股関節付近を負傷した場合、大腿骨を支えたり、円滑な歩行動作が出来なくなったりすることがあります。

また、交通事故により,大腿骨の股関節側を損傷した場合、主に金属やセラミックでできた人工関節や人工骨頭に置き換える手術がなされることもあり、その手術により、股関節が動かしにくくなるなどの可動域制限が生じることもあります。

さらに、手術をしなかった場合においても、骨盤を骨折してしまうと、自由に動くことができなくなるので、ベットで長期間、安静を余儀なくされます。

そうすると、運動量が低下することにより、股関節を動かすことに重要な股関節周りの筋力が低下したり、股関節自体の柔軟性が低下することにより、股関節やその周辺の筋肉が硬直し、股関節の可動域に制限が生じることがあります。 股関節の可動域制限の後遺障害等級は、以下の表のとおりです。

第8級7号

一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

第10級10号

一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

第12級6号

一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

以下で、上記要件の具体的内容を詳しく説明します。

「関節の用を廃したもの」(8級7号)について

「関節の用を廃したもの」(8級7号)とは、以下で挙げる①~③のいずれか一 つに該当した場合をいいます。

① 関節が硬直したもの(具体的には、関節自体が癒着し、可動性を完全に失った状況をいいます。)。

② 関節の完全弛緩性麻痺(※筋肉を支配するすべての末梢神経が機能しなくなり、筋肉が緊張せずゆるんだ状況になり、正常な筋運動ができなくなる状況)又はこれに近い状態にある⦅※自動運動(自分の力のみで動かすこと)で、ケガをした股関節の可動域角度が、健康で正常な股関節の可動域角度に比べ、10%程度以下に制限されたこと⦆こと

③ 人工関節等を置換した関節であり、股関節の可動域角度が2分の1以下に制限されていること

「機能に著しい障害を残すもの」(10級10号)について

「著しい障害を残すもの」(10級10号)とは、上記①~②のいずれか一つに該当する場合をいいます。

① 人工関節等が置換されていない関節で、患側(左右の股関節のうち、ケガをしている方)の股関節の可動域角度が、健側(左右の股関節のうち、ケガをしていない方)の股関節の2分の1以下に制限されていること

② 人工関節等を置換している関節であること

「機能に障害を残すもの」(12級7号)

「機能に障害を残すもの」(12級7号)とは、 人工関節等が置換されていない関節で、患側の股関節の可動域角度が、健側の股関節の可動域角度の4分の3以下に制限されている場合をいいます。

なお、両側の股関節を負傷した場合には、後遺障害の認定において定められている参考角度として定められている可動域角度(正常な一般人の可動域角度)と対比したうえで、可動域制限が、何割生じてているのか、判断し、後遺障害の要件に該当するか否か判断をします。

股関節の機能障害の検査方法について

股関節の機能障害の検査は、主に、医師の同部位の可動域角度の測定により判断されます。

股関節の動揺関節の後遺障害について

交通事故によって股関節を骨折する等して受傷した場合には、股関節の安定性が損なわれ、股関節が正常に作用する場合には生じえない異常な関節運動が生じていることがあります。

そのことを、動揺関節といい、被害者の方が動揺関節となってしまった場合には、以下の後遺障害に該当する可能性があります。

股関節の動揺関節の後遺障害の等級の区別に関しては、どの程度、股関節に硬性補装具を必要とするかどうかを基準として、上記股関節の機能障害の等級を参考にして、後遺障害の等級を決定することになっています。   

8級準用

硬性補装具を常に必要としている場合

10級準用

硬性補装具を時々必要としている場合

12級準用

① 硬性補装具を重激な労働等の場合のみ必要としている場合

② 動揺関節が習慣性脱臼に該当する場合

補装具とは、身体障害者の方が、身体の損傷、欠損、機能低下を補うために身体の一部を他の方法で代替する手段として用いる器具をいい、「硬性補装具」とは、プラスチックまたは金属製の支柱で作られた補装具をいいます。

したがって、股関節の安定性を補うために、補装具を使用することがあります。

骨盤、股関節の神経症状の後遺障害について

交通事故により、骨盤や股関節を負傷し、完治を目指して治療を継続した場合でも、治療の効果がなくなり、よくも悪くもならない状況(その状況を「症状固定」といいます。)になることがあります。

その場合、被害者の患部には痛みやしびれ等の自覚症状が残存することがあります。痛みやしびれ等の症状を、ひとくくりにして、「神経症状」といいます。

上記後遺障害は、被害者に、痛みやしびれ等の「神経症状」が残存してしまった場合、それを裏付ける所見が画像明らかであり,その所見が治ることなく,残存している場合には、12級13号に該当します。

一方で,所見がある場合でも,それが治った場合や症状とのつじつまが合わない場合には、14級9号に該当することにとどまります。

したがって、まず、等級を分ける要素として、神経症状の原因となる所見が、画像上明らかであるか否かによって決されます。そのため、画像所見があるか否かで、後遺障害の等級も異なるので、画像所見の有無を医師に確認する必要性がありますし、弁護士に相談して適切な等級申請を行う必要性があります。

なお、14級9号は、後遺障害における一番低い基準でありますが、14級9号に該当することは容易ではありません。なぜなら、後遺障害に該当することを根拠づける画像所見を欠くためです。

いわゆる客観的に被害者の方が抱く神経症状が、本人以外の第三者にはわからない状況です。客観的な裏付けがない状況です。

客観的な根拠を欠く状況において、14級9号に該当するためには、医師の医学的な知識はもちろん、特に交通事故に精通した弁護士による法的観点からのアドバイス・サポートは、後遺障害に該当するために、非常に重要になります。

第12級13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

第14級9

局部に神経症状を残すもの

正常分娩機能の後遺障害について

正常分娩機能の後遺障害の認定基準

女性特有の後遺障害である正常分娩機能に関しては、交通事故より骨盤骨折等が生じ、骨産道が狭くなり、妊娠自体の機能には問題がないものの、産道が一定程度以下に狭くなっているため、正常の分娩が困難になり、帝王切開等の対応が必要になる場合、上記後遺障害に該当する可能性があります。 正常分娩機能の後遺障害等級は次のとおりです。

11級相当

骨盤または比較的狭骨盤(産科的真結合線が、10.5㎝未満または入口部横径が11.5㎝未満のもの

正常分娩機能の後遺障害の検査方法について

整形外科の医師による画像検査のみならず、産婦人科の医師による診断をしてもらう必要性があります。

さいごに

今回は、骨盤・股関節に関する後遺障害について解説いたしました。交通事故により骨盤や股関節を負傷した場合には、すぐに、受傷部位に応じて、病院を受診し、定期的な治療を継続しましょう。

定期的な治療は、症状の改善にもつながりますし、定期的に治療を継続していなければ、そもそも「将来においても回復しない」という後遺障害認定の大前提を認めてもらえない可能性すらあります。

そのため、医師のみではなく、治療段階より交通事故に精通した弁護士と協力し、治療における注意点を把握することも、適切な後遺障害の等級の獲得を目指すうえで重要です。治療が終了された場合にも、後遺障害が認定されるための弁護士からの法的アドバイスは重要になります。 症状に応じた適切な後遺障害等級が認定されるか否かということは、適切な賠償を受けるために最も重要な事項と言っても過言ではありません。

骨盤・股関節の後遺障害認定は、難解な点も多く、症状が事故からしばらく経ってから出てくることもあり、その時点では事故との関係性がはっきりしないという事態も考えられます。

交通事故の被害に遭い、骨盤・股関節部分に怪我をされた場合、早期に病院を受診するとともに、専門知識を有する弁護士へご相談されることをお勧めいたします。