後遺症

交通事故における後遺障害の事前認定とは

交通事故における後遺障害の事前認定とは

交通事故の被害に遭って後遺障害が残った場合、自賠責保険や自賠責共済から「後遺障害等級認定」を受ける必要があります。今回は、後遺障害等級認定を受ける方法の一つである「事前認定」について、交通事故問題の専門家である弁護士の視点から詳しく解説します。

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事前認定とは

まずは、事前認定がどのような仕組みの制度なのか、基本的なポイントを知っておきましょう。

事前認定と後遺障害等級認定の関係

事前認定は、交通事故の後遺障害等級認定を受けるための方法の一つです。交通事故によって後遺障害が残った被害者は、後遺障害等級認定を受けないと後遺障害慰謝料の支払いを受けることが難しくなります。

後遺障害等級認定の申請は加害者側の自賠責保険や自賠責共済に対して行いますが、このとき被害者は2つの申請方法から選択することができます。1つは、被害者自身が直接加害者の自賠責保険(共済)に対して申請を行う「被害者請求」、もう1つが、被害者の後遺障害認定の手続きを加害者の任意保険会社に委託する「事前認定」です。

事前認定の仕組み

事前認定は自賠法15条に規定されている保険金の請求方法です。自賠法15条には、「被保険者は、自分が被害者に実際に支払いをした場合において、その限度で自賠責に保険金を請求することができる」と記載されています。つまり任意保険会社(被保険者である加害者の代理)は、被害者に支払いをした後、自賠責保険に対して保険金を請求することができるのです。

※参照元:”自動車損害賠償保障法”. 法庫. http://www.houko.com/00/01/S30/097.HTM,(2018年2月23日).

ただし、被害者がどの後遺障害等級に認定されるのか分からなければ、任意保険会社は被害者にどの程度の賠償金を支払うべきなのか判断できません。そのため、任意保険会社は被害者に賠償金を支払う前に被害者の後遺障害等級を確認します。これが「事前認定」という名称の由来です。任意保険会社が事前認定する場合、自賠責保険(共済)は、任意保険会社に対してすぐに保険金を支払うことはありません。

示談が成立して任意保険会社が被害者に保険金を支払った後、事前認定を受けた等級にもとづいて、自賠責保険から任意保険へと適正な額の保険金が支払われることになります。つまり事前認定は、任意保険会社が自賠責保険に保険金請求をするときに備えて、事前に被害者の後遺障害等級認定の見込みを確認しておく制度と言えます。

事前認定のタイミング

次に、交通事故の被害者が事前認定を受ける場合、手続きを行うタイミングについてご紹介します。

症状固定した後に申請する

後遺障害は、「症状固定」したときに残っている症状について認められます。「症状固定」とは、治療を継続しても、それ以上状態が改善しなくなった状態のことです。事前認定は後遺障害の有無や等級を確認するための手続きであるため、事前認定を行うタイミングは「症状固定して、治療が終了した後」ということになります。

症状固定すべき時期

通常、交通事故の被害者が通院治療を継続して一定期間が経過すると、任意保険会社から「そろそろ症状固定ですので、事前認定しますか?」などと伝えられる場合があります。このとき、被害者が同意すると、治療を終了して事前認定を開始することになります。

しかし、「症状固定したかどうか」は、基本的には医師が医学的な観点から判断することです。そのため、まだ医師が症状固定だと判断していない時期に、任意保険会社の「そろそろ症状固定の時期です」という説明を真に受けて手続きを進めてしまうと、治療継続の必要があるのに治療費の支払いを打ち切られてしまい、適切な補償が受けられない可能性が出てきます。

後遺障害認定を受ける前には、必ず医師に「症状固定した」かどうかを確認しましょう。医師がまだ症状固定していないと判断するのであれば、加害者側の保険会社の話を聞き入れる必要はありませんので、治療を継続しましょう。

事前認定に必要なもの

事前認定を行う際に被害者が用意する必要があるのは、「後遺障害診断書」のみになります。後遺障害診断書とは、後遺障害の有無や内容について詳細に記載されている診断書です。後遺障害等級認定においては、後遺障害診断書の内容が非常に重要視されます。後遺障害診断書に記載されている内容次第で、等級認定の可否に影響を及ぼすこともあるため、正確に作成してもらう必要があります。

交通事故問題に詳しくない医師に対して後遺障害診断書の作成を依頼する場合は、内容に間違いや不十分な点がないか注意して確認しましょう。より確実に後遺障害認定を受けるためには、交通事故の患者に理解があり、後遺障害認定の手続きに携わった経験のある医師を選ぶことが望ましいです。

また、医師に後遺障害診断書の作成を依頼すると5千円~1万円程度の診断書作成費用が必要になりますが、こうした費用は後に加害者に請求することができるので、領収証を保管しておくようにしましょう。ただし、等級認定を受けられない結果となった場合は、診断書作成費用の支払いも受けられないため、注意が必要です。

事前認定の基本的な流れ

次に、事前認定の手続きの流れをご説明します。

後遺障害診断書を提出する

医師から後遺障害診断書を受け取り、それを加害者側の任意保険会社に送付します。事前認定の場合、被害者本人が行うべき作業は、これだけで終了します。

任意保険会社が申請を行う

任意保険会社は被害者から後遺障害診断書を受けとると、その他に必要な書類の準備を行います。その後、任意保険会社が自賠責保険や自賠責共済に対して、事前認定を申請します。

自賠責保険が後遺障害について調査・決定する

事前認定の申請を受けた自賠責保険(共済)は、「損害保険料率算出機構」という団体に調査を依頼します。損害保険料率算出機構は、各地の調査事務所を使って後遺障害の有無や内容を精査します。その調査結果をもとに後遺障害についての判断が行われ、自賠責保険(共済)から加害者側の任意保険へと結果が通知されます。

任意保険会社が被害者に結果を通知する

自賠責保険(共済)から加害者側の任意保険会社へ認定結果が通知されると、任意保険会社が被害者に対して認定結果を連絡します。このように、事前認定の場合、被害者は認定手続きにほとんど関与しません。後遺障害診断書を任意保険会社に提出した後は、認定結果の連絡を待つだけです。

事前認定にかかる期間

事前認定にかかる期間は、おおよそ2~3ヶ月程度です。ただし、症状が重症であるなど、後遺障害の認定を慎重に行わなければならないケースでは、認定手続きに時間を要するケースもあります。認定にかかる期間があまりに長くなるようであれば、任意保険会社の担当者に連絡をとり、状況を確認した方が良い場合もあります。

事前認定のメリット

事前認定には、以下のようなメリットがあります。

手続きが簡単

事前認定の場合、被害者は医師に後遺障害診断書の作成を依頼し、それを加害者の任意保険会社に提出するだけで手続きが完了します。その後も、自賠責保険とのやり取りは基本的に加害者の保険会社が進めるため、被害者が関与することはほとんどありません。仕事や家事などが忙しく、手続きを行う十分な時間が確保できない方や、ケガの影響で動き回ることが困難な方にとっては、大きなメリットになるでしょう。

大きな費用がかからない

事前認定の場合、後遺障害診断書を取り寄せる費用が必要になりますが、それ以外は特に費用はかかりません。後遺障害等級認定を受けるもう一つの方法である「被害者請求」の場合は、診療報酬明細書や検査資料の取り寄せなどが必要になり、数万円程度の費用がかかることもあります。

こうした費用は、後遺障害が認定されれば後に加害者に請求することも可能ですが、一時的に立替が必要になる上、加害者に請求する際、過失相殺される可能性もあります。そのため、被害者請求と比較して費用が大きくかからないことは、事前認定のメリットと言えるでしょう。

事前認定のデメリット

事前認定にはメリットだけではなく、以下のようなデメリットも考えられます。

手続きの状況が見えにくい

事前認定をするとき、被害者自身は後遺障害認定の手続きにほとんど関与しないので手間はかかりませんが、具体的にどのような内容で手続きが進んでいるのか、詳しく把握することはできません。「すでに自賠責保険に書類を提出したのか」、「調査事務所から何か連絡があったのか」、「どのようなことが問題になりそうか」など、手続きの状況が非常に見えにくくなるため、不安になりストレスを感じることもあるでしょう。

積極的な立証活動ができない

後遺障害等級認定の申請を行うときには、被害者側からの積極的な立証活動が有効です。最低限の必要書類を提出するだけではなく、自己に有利な医証を用意して提出したり、追加で検査資料を提出したりすることが望ましいでしょう。しかし、事前認定では被害者自身が後遺障害認定手続きにほとんど関与しないので、こうした対応をとることは困難です。積極的に立証活動を行えないという点は、事前認定のデメリットのひとつと言えるでしょう。

事前認定における「異議申し立て」

後遺障害の認定結果は加害者の任意保険会社から通知されますが、必ずしも被害者が納得できる結果になるとは限りません。そのようなときには、認定結果に対して「異議申し立て」をすることができます。

事前認定で異議申し立てする方法

事前認定によって後遺障害等級認定の申請を行った場合、異議申し立てについても引き続き、事前認定によって行うことができます。事前認定で異議申し立てをする場合、基本的に「異議申立書」を作成して、加害者の任意保険会社に渡すだけで手続きは完了となります。ただし、異議申し立てを受けて再審査を行うのは、一度目の認定を判断した自賠責保険(共済)なので、再び同じ主張を行っても認定結果が変わる可能性は低いでしょう。

被害者請求に切り替える方法

事前認定では異議申し立てによって認定結果を覆すことが難しいと感じるなら、異議申し立ての際に「被害者請求」に切り替えるのがよいでしょう。被害者請求に切り替える際には、被害者請求用の書類一式を用意しなければなりません。具体的には、以下のような書類です。

■保険金請求書
相手の自賠責保険や共済に連絡して、送付を受けます。
■交通事故証明書
自動車安全運転センターで取得するものです。郵便局で申請をして、郵送で取り寄せることも可能です。
■事故発生状況報告書
相手の自賠責保険から送られてきた書式を使って被害者自身が作成します。
■死体検案書または死亡診断書
医師に作成してもらう書類です。
■診断書、診療報酬明細書
病院から取り寄せるものです。
■交通費明細書
相手の自賠責保険から送られてきた書式を使い、被害者自身が作成します。
■被害者の印鑑登録証明書
お住まいの市町村役場で申請して取得します。
■休業損害証明書
相手の自賠責保険から送られてきた書式を勤務先に渡し、作成してもらいます。

事前認定から被害者請求への切替えができたら、後遺障害診断書を取り直したり、レントゲンやMRI撮影、可動域検査などの各種検査を新たに受けたりして、後遺障害をより確実に立証するための資料を用意すべきです。こうしたものをすべて揃えたら、加害者側の自賠責保険や自賠責共済に対してまとめて送付します。

異議申し立てを行うタイミング

後遺障害等級の認定結果への異議申し立てには、特に期限は設けられていません。示談が成立するまでは、いつでも異議申し立てを行うことができます。また、異議申し立てには回数制限がなく、何度でも行うことが可能です。異議申し立てを行うのは、一度目の認定結果を覆せるだけの資料を整えた時点で、速やかに行うと良いでしょう。

自賠責保険・共済紛争処理機構や訴訟手続きを利用する

一般的に「異議申し立て」は、加害者の自賠責保険や自賠責共済に対する「再審査の請求」を指しますが、それでも認定結果が変わらないときには「自賠責保険・共済紛争処理機構」を利用したり、訴訟を起こしたりすることも可能です。自賠責保険・共済紛争処理機構を利用すれば、自賠責保険(共済)とは異なる機関が後遺障害認定についての判断を行い、訴訟を起こせば裁判所が判断をすることになるため、自賠責のとは異なる判断結果になる可能性が出てきます。

事前認定を弁護士に依頼するメリット

事前認定は、自分自身が対応することも出来ますし、弁護士に対応を依頼することも出来ますが、弁護士に依頼した場合は以下のようなメリットがあります。

対応がスピーディかつ確実になる

一般的に、交通事故の被害者は後遺障害等級認定に関して知識を持っていないことがほとんどです。そのため、たとえば後遺障害診断書の作成を医師に依頼する際、どのような点に注意して記載して欲しいかなどを正確に伝えることは難しいでしょう。

弁護士に相談すれば、診断書作成の重要なポイントなどのアドバイスを受けられますので、医師に対して適切な依頼をすることができるでしょう。また、事前認定をするときには、基本的に加害者の保険会社の担当者に手続きを任せることになりますが、被害者に弁護士がついていれば、保険会社の担当者はより慎重な対応をとる可能性もあります。

示談金が増額される可能性がある

事前認定を弁護士に依頼すると、そのまま示談交渉も依頼するのが一般的です。その場合、被害者が自分で示談交渉を進めるよりも、示談金の額が上がる可能性が高まります。特に、高い等級の後遺障害認定を受けた場合には、弁護士が介入するかどうかで賠償金額に大きな差額が発生しやすくなります。

ストレスが軽減される

損害賠償の請求手続きを行うことは、被害者にとって大きなストレスになることも少なくありません。本当に後遺障害認定を受けられるのか、どの程度の額の賠償金を受けとることが出来るかなど、不安に感じる方もおられます。保険会社の担当者に対して、連絡を入れること自体がストレスに感じるケースもあるでしょう。弁護士に手続きを任せれば、弁護士が被害者に代わり適切なタイミングで状況確認を行います。手続きがどの程度進んでいるかなど、気になったときには弁護士が状況を教えてくれるため、被害者のストレスは軽減されるでしょう。

事前認定が向いているケースについて

最後に、後遺障害等級認定の申請を行い際、「被害者請求」よりも「事前認定」の方が向いているケースの例をご紹介します。

後遺障害等級認定をほぼ確実に受けられる場合

後遺障害の症状が医学的にも証明されており、交通事故との因果関係も明らかで、後遺障害等級認定の障壁となりそうな事由が一切ないのであれば、事前認定を利用しても全く問題ありません。手続きの手間が省けるメリットを、最大限享受できます。

等級について争いがない場合

後遺障害の等級を決定するために複雑な検討や考察が必要な場合は、事前認定で加害者の保険会社に任せていると適切に認定を受けられない可能性があるため被害者請求の方が向いていますが、そうでない場合は事前認定でも問題ありません。複雑な考察が必要となるケースの例として、系列が異なる複数の後遺障害が残った場合があります。

この場合、「併合認定」によって等級が上がるケースがありますが、併合認定には細かいルールがあるので、後遺障害認定請求をする際には、正しく理解しておく必要があります。また、同じ部位、系列の後遺障害であっても、症状の程度によって認定される等級が異なる場合があり、細かいルールが定められているため、注意が必要です。

自分で書類を集めることが難しい場合

何かしらの事情で弁護士に手続きを依頼することが出来ず、なおかつ自分で書類を集めたり手続きをしたりするのが煩わしいという場合には、事前認定を利用するしかありません。ただしこの場合、賠償金が減額されてしまう可能性は高くなってしまいますので、注意が必要です。

最後に

今回は、後遺障害等級認定の申請をするときの「事前認定」の方法について解説しました。後遺障害認定は被害者にとって非常に重要なポイントです。適切な手続き進行方法について自信が持てない場合には、当事務所でも無料相談を承っておりますので、まずは一度お気軽にご連絡ください。

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