慰謝料

物損事故で慰謝料が請求できる場合とは

物損事故で慰謝料が請求できる場合とは

交通事故の損害賠償として、まず頭に思い浮かぶのは、治療費と車の修理費用、そして慰謝料ではないでしょうか。しかし、どのような交通事故でも、被害者の精神的苦痛に対する損害賠償である慰謝料が認められるわけではないことをご存じでしょうか。

幸いにして、被害者自身に怪我がなく、乗っていた車やバイク、持っていた時計やスマートフォン等の物品が壊れただけの交通事故(一般に物損事故といいます)においては、原則的に被害者の慰謝料は認められません。

しかし、例外的に、物損事故であっても被害者に慰謝料が認められる場合があります。物損事故で慰謝料が認められないのはなぜなのか、慰謝料が認められるのはどのような場合か解説いたします。

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人身事故と物損事故の違い

交通事故には、その損害を受けた対象の違いにより大きく2つに分けることができます。不幸にして被害者が怪我をしたり、死亡したりした場合の「人身事故」と、車やバイク、自転車のほか、身につけていた時計やスマートフォン、着衣などの財産が損傷した「物損事故」です。

なお、交通事故の発生を証明する書類である交通事故証明書の記載で「人身事故」「物件事故」の区別がありますが、証明書に「物件事故」とされていたとしても、実際に怪我をしていた場合には、証明書の記載にかかわらず人身事故として慰謝料請求ができます。

関連ページ:物損事故から人身事故に切り替える方法

人身事故で加害者に請求できる項目

人身事故で加害者に請求できる損害賠償の内容としては、怪我の治療のために要した治療費のほか、通院のために支払った交通費、怪我や入通院のために減少した収入を賠償してもらう休業損害、怪我により入院・通院せざるを得なくなった被害者の精神的苦痛を賠償するための傷害慰謝料等です。

なお、後遺障害が残った場合は、別途、後遺障害慰謝料逸失利益も加害者に請求できます。

物損事故で加害者に請求できる項目

一方、物損事故について、加害者に請求できる損害賠償の内容としては、乗っていた車やバイク、自転車の修理費(又は時価額)、事故に遭った車両を修理工場等に運ぶためのレッカー代、修理期間中のレンタカー代、交通事故により損壊した携行品や着衣などの修理費や時価額等です。

物損事故において、加害者に請求できる損害賠償の内容に、慰謝料の項目は一般に含まれていません。

物損で慰謝料請求は原則として認められない

長年大切に乗っていて、人一倍愛着を持っている愛車、家族との思い出が一杯につまった車や物品等が、交通事故の被害に遭った場合、被害者にとっては、単に物が壊れたというだけでは済まず、精神的に大きなダメージを受けることもあるかと思います。しかしながら、裁判をはじめとする交通事故の損害賠償の実務では、物が損壊したことにより被った被害者の精神的な苦痛に対する慰謝料は原則として認められていません。

一般的に、車やバイク、携行品や衣服等に被った損害は、修理費用または事故当時の物品の価値である時価額等で損害額を算出し、金銭で損害賠償されるだけです。これは、物損事故の賠償については、財産的損害が回復されることが目的であり、財産的損害が回復されることにより、被害者の精神的苦痛も癒やされるのが通常であるとの考えから、物損に関して別途、慰謝料請求は認められないというのが理由です。

また、現実的にも、物品に対して、被害者の思い入れがどれだけあるのか、またそれを失ったことでどれだけの精神的苦痛が生じるのかは、被害者の主観的な部分ですので、結局は人それぞれとしか言いようがなく、入院・通院の日数や期間を基準にして算定される人身事故の傷害慰謝料と比べて、客観的な物差しがないという事情も考えられます。

物損事故で慰謝料が認められる例外

実は一部の物的な損害に対して、被害者の慰謝料を認めた裁判例もあります。

慰謝料が認められるかどうかについての明確な判断基準があるわけではないのですが、一般論として、その物品と被害者との関係において、その物が壊れることにより、被害者の主観的利益や精神的な平穏を強く害されたような特段の事情が認められる場合や、その物に財産的価値以外に考慮に値する主観的精神的価値をも認めていたような特別の事情があるか否かが、裁判での判断に影響していると考えられます。

以下で、物損で慰謝料が認められたケースを紹介いたします。

家屋が損壊した事例

加害者が運転する大型トラックが、運転を誤って道路を外れ、高齢の被害者2人が住んでいた家屋に衝突し、家屋が大きく損壊したという事案で、裁判所は、高齢の身で住み慣れた家屋を離れ、半年間アパート暮らしを余儀なくされた精神的な苦痛や、借金などをして家屋の修復工事をする等の事後処理に奔走させられた苦労等の諸事情が考慮され、被害者2人分の慰謝料として計60万円の支払いを認めました(神戸地裁平成13年6月22日判決)。

墓石が倒壊した事例

霊園内で走行していた車が、運転を誤って、墓石に衝突したことにより、墓石が倒壊したのみならず、納骨されていた骨壺等が露出するなどした事案で、裁判所は、墓地等が先祖や故人が眠る場所として通常その所有者にとって強い敬愛追慕の念の対象となるという特殊性を考慮した上で、被害者に対して慰謝料として10万円の支払いを認めました(大阪地裁平成12年10月12日判決)。

芸術作品の事例

一般的ではありませんが、こんな事例もあります。被害者が自ら制作した陶芸作品が交通事故で損壊した事案で、被害品が他の物と代替性のない芸術作品の構成部分であり、被害者が自らそれを制作した芸術家であったことなどを考慮して、被害者に対して慰謝料として100万円の支払いを認めました(東京地裁平成15年7月28日判決)。

ただし、芸術作品である被害品について、具体的な財産的価値が算定できないという事情も考慮されていて、単純に慰謝料として認定されたと言い切れない部分もあります。

ペットが死亡した事例

法的にはペット等の動物は物として扱われます。動物の治療費等は一定の範囲内で認められることがありますし、ペットが死亡した場合は時価額や葬儀費用等の賠償も認められたケースもありますが、飼い主の精神的苦痛に対する慰謝料はほとんど認められていません。

しかし、長年愛着をもって飼っていた犬が交通事故により死亡した事案で、裁判所は長い間家族同然に飼ってきたことを理由に、飼い主に対し、慰謝料として5万円の支払いを認める事例が存在しました(東京高裁平成16年2月26日判決)。

また、愛犬のラブラドールレトリバーが交通事故に遭い、後遺障害が残った事案で、裁判所が、飼い主夫婦に対して慰謝料として計40万円の支払いを認めた事例もあります。(名古屋高裁平成20年9月30日判決)。

まとめ

以上、ご覧になっていただいたように、交通事故による物の損害について、所有者が被った精神的苦痛に対する慰謝料は原則として認められません。ただし、過去の裁判例では、一部ではあるものの、慰謝料が認められたケースもあります。

ご自身の物損の事例が、過去の裁判例や判断の枠組みから考えて、慰謝料が認められるのか否か、難しい判断となりますので、判断に迷われたら、経験豊富な弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

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