慰謝料

交通事故で同乗者が怪我をした場合の慰謝料

交通事故で同乗者が怪我をした場合の慰謝料

交通事故によって怪我をした際、加害者に対して、治療費や慰謝料等を請求することができますが、これは他人が運転している車両に同乗していた場合も同様です。したがって、例えば追突事故のような一方的な事故であれば、同乗者は、追突してきた車両の運転者に対して請求をすればよいわけです。

しかし、出会い頭事故のように、自身が同乗していた車両の運転者にも事故を起こした責任(過失)がある場合にまで、常に相手車両の運転者に対し、全額の請求ができるのでしょうか。また、ご自身が同乗していた車両の運転者の方に、より大きな過失がある場合には、誰に対して賠償を請求すべきなのでしょうか。

この記事では、以上のような、交通事故における同乗者に特有の問題を、交通事故専門の弁護士がご説明いたします。

※なお、お怪我による損害は、ほとんどの場合、車両の運転者のみならず、車両の所有者に対しても賠償請求できます(自賠法第3条)。以下でも特に触れてはいませんが、車両の運転者に対し請求ができる場合には、車両の所有者に対する請求もできるものとお考えください。

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誰に対して、どの程度の請求ができるのか

例えば、冒頭にあげた出会い頭事故の例で、相手車両の運転者の過失が70%にとどまり、同乗していた自動車の運転者にも30%の過失があるとしましょう。この場合、あなたは、相手車両の運転者に対し、70%の請求しかできないのでしょうか。

また、相手車両の運転者が保険に加入していない場合、慰謝料の支払い等が渋られるかもしれません。このような場合にまで、あなたは、相手車両の運転者に対して、根気よく請求を続けなければならないのでしょうか。まずは、この点に関する原則を確認してまいります。

いずれの運転者にも、全額の賠償請求できる

いずれの車両の運転者にも過失がある場合、同乗者の怪我は、「複数の加害者の不注意によって発生した。」といえます。

このように複数の加害者が共同して被害を生じさせることを、法律上、「共同不法行為」と呼びます。 共同不法行為においては、過失の割合にかかわらず、いずれの加害者に対しても全額の請求ができるとされています(民法第719条1項・共同不法行為)。

一方の加害者が保険に加入していない等、偶然の事情によって、被害者による賠償金の回収に不都合が生じないように定められた原則です。

原則にしたがった請求先の選択

以上によりますと、冒頭の例においては、相手車両の運転者に対して全額の賠償が請求できることになります。相手車両の運転者は、自身の過失割合が70%に過ぎないと主張しても、原則として100%の支払を拒むことができません。単に、全額を支払った後、自身の過失を超える30%の部分を、もう一方の運転者に請求できるに過ぎないのです。

また、意外と見落とされがちですが、共同不法行為の原則にしたがえば、ご自身が同乗していた車両の運転者に対しても治療費や慰謝料等を全額請求できることになります。相手車両の運転者が保険に加入していなかったり、相手車両の保険会社が不誠実な対応に終始している等の事情によって、治療費や慰謝料の回収が難航しそうであれば、そのような請求も選択肢に入ります。

タクシー・バス利用中の事故も該当

「同乗者」という単語からは、自動車の助手席・後部座席や、バイクの後部座席に同乗している際の事故をイメージされる方も多いのではないでしょうか。 しかし、このほか、タクシーやバスをご利用されている場合も、あなたが「同乗者」となる点は押さえておきましょう。 加害車両が別にある事故であっても、利用していたタクシーやバスの運転者に少しでも過失が認められる限り、タクシーやバスを提供している会社やその保険会社に対して全額の賠償請求ができることになります。反対に、タクシー・バス側が引き起こした事故であったとしても、他の車両の運転者に過失が認められる限り、そちらに対しても全額の賠償請求ができるのです。

全額の賠償請求が認められない例外

一方で、法律上、「被害者にも過失があったとき」は、賠償額においても考慮されると定められています(民法第722条2項)。 事故における過失割合に応じて、賠償金が減額される「過失相殺」は、これによるものです。

同乗者の場合であっても、同様の考え方によって、慰謝料等が全額請求できないケースがありますので、以下では、この点を確認してまいります。

同乗者自身にも過失がある場合

まず、同乗者自身にも過失があるケースについて触れておきます。

よく相談をお受けしますのが、後部座席の同乗者がシートベルトを着用していないケースです。シートベルトを着用していれば怪我が軽く済んだといったことが見込まれる場合を中心として、同乗者に10%前後の過失を認める裁判例があるので注意を要します。

また、同乗者自身が危険な行為を行っていたケースが考えられます。例えば、助手席にいる同乗者が、運転者に対して携帯電話の画面を見せようとした結果、前方不注視により事故が発生した場合がこれに該当します。

これらの場合には、まさに、「被害者にも過失があったとき」に該当しますから、過失相殺によって、賠償金が減額されることになります。

運転者が同一の生計で生活する親族の場合

一方で、同乗者(被害者)自身に過失がなくとも、同乗者と運転者が「身分上、生活関係上、一体をなす関係にある」場合には、運転者の過失は「被害者側」のものとして、考慮されることとなります(昭和42年6月27日付・最高裁判決)。

「身分上、生活関係上」の一体性といわれると分かりづらいかもしれませんが、「同一の生計のもとに生活している親族」が該当するとお考えください。したがって、生計を同じくする親族が運転する車両に同乗していた場合には、運転者の過失に応じて、同乗者が請求できる賠償金も減額されることになります。

例えば、夫が運転する自動車の助手席にて出会い頭事故に遭った妻の例を考えてみてください。妻は、本来であれば、相手車両の運転者に全額の賠償が請求できます。一方、相手車両の運転者は、妻に対する支払いに応じた場合、夫に対して、過失割合に応じて支払金額の一部を負担するよう請求できます。

しかし、夫婦の生計が同一であるならば、相手車両の運転者が、最初から夫の過失割合分を減額した金額を妻に支払えば、一回で解決できるはずです。ですから、このような場合、同乗していただけの妻には過失がなくとも、妻の請求においては、夫の過失割合に基づく減額が認められているのです。

好意同乗の場合

そのほか、同乗者の賠償請求が減額される例として、「好意同乗」と呼ばれる考え方があります。これは、運転者による事故発生のリスクを把握したうえで、同乗するに至った場合には、同乗者も一定の責任を負うべきであるという考え方です。

但し、この類型では、事故や怪我の発生に直結するような過失が同乗者にあるとは限りませんし、また、同乗者と運転者の関係も問いませんから、きわめて限定的に考えられています。例えば、

①運転者の飲酒運転や無免許運転を黙認していた場合
②運転者の無謀な運転を咎めることなく同乗を継続していた場合
③同乗者が箱乗りや原付バイクの3人乗りをしていた場合

等があげられますが、これらの事情があるにもかかわらず、好意同乗による減額を否定した裁判例も少なくありません。

また、減額を認める裁判例においても、運転者と同乗者の人間関係や、同乗者が把握していたリスクの程度に応じてではありますが、それほど高い減額率とはしない傾向にあります(10%~30%程度のものが中心です。)。

まとめ-実際の請求における問題-

以上みてきたように、事故に遭われた同乗者の方は、基本的には加害者に対して全額の賠償を請求できます。しかし、保険会社が、一方の加害者が無保険であるとか、好意同乗である等と理由を並べ、全額の支払いを強硬に認めないケースもあり、ご自身での交渉がご負担となることもあります。

また、運転者と懇意にされている場合、法律的にはともかく、実際にはどのように請求することが双方にとって良いのかは難しい問題です。運転者と同乗者は、経済的に対立する可能性(同乗者の慰謝料額等を増額すると、後に加害者から運転者に請求される金額まで増額する可能性)があるからです。

当事務所では、これらの問題に対しても、真摯に最良の請求方針を提案し、運転者様・同乗者様のいずれにつきましても、ご納得いただける解決を図ってまいりました。ご自身では運転されていない車両で事故に遭われた方は、今後の請求方針等も含め、早期に当事務所にてご相談いただければと存じます。

(但し、運転者様と同乗者様のご両名ともにご依頼いただく場合には、前記の対立関係について、予めご説明をお聞きいただき、ご了解いただくことを要します・弁護士職務基本規定第32条)