交通事故の基礎知識

交通事故の加害者が未成年であった場合

交通事故の加害者が未成年であった場合

交通事故の加害者が未成年であったとき、被害者は誰に対して損害賠償を請求していけばいいのでしょうか。

未成年者本人に対して請求する場合、未成年者は十分な収入もなく、成人と比べて賠償するだけのお金を持っていないということも多く、被害者にとっては賠償を受けることができるのか不安が残ります。

そこで本稿では、交通事故の加害者が未成年者であった場合に、被害者の方が適切な損害賠償を受けるためのポイントを解説いたします。

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未成年者は法律上賠償責任を負うのか

未成年者の責任

民法において、未成年者が他人に損害を与えた場合でも、「責任能力」がなければ法律上の賠償義務を負わないとされています(民法第712条)。

「責任能力」とは、自分が行った行為の責任を認識するための能力のことで、幼い子どもなどにはまだ備わっていない能力です。

逆に、加害者が未成年者であっても「責任能力」が認められる場合には、未成年者本人が法律上の損害賠償義務を負うことになります。

過去の裁判例によれば、12歳前後を境に「責任能力」が認められる傾向にあります(大審院判決大正4年5月12日、大審院判決大正6年4月30日)。

監督者(親など)の責任

もし未成年者に責任能力がない場合には、未成年者本人は損害賠償義務を負いません。この場合、未成年者の親などの監督義務者が、監督義務を怠らなかったことを立証しない限り賠償責任が認められます(民法第714条)。

未成年者に責任能力がある場合には、未成年者本人が損害賠償義務を負うことになりますが、この場合にも、未成年者の親などの監督義務違反により損害を発生させたことが認められる場合には、未成年者本人に加え、その親も別途損害賠償責任を負うことがあります。

交渉窓口は監督者とすべき

未成年者と締結した示談は親などの法定代理人の同意がない限り、取り消されてしまうリスクが残ります。

そのため、未成年者本人が賠償義務を負う場合であっても、未成年者本人と直接交渉することは避けた方が得策です。

当初から、未成年者の親などの法定代理人を窓口としてお話された方がいいでしょう。

未成年者に対する損害賠償請求のポイント

未成年者本人に責任能力が認められるケースは多い

交通事故の場合も同様で、加害者が未成年であっても、当該未成年者に責任能力が認められる場合には、未成年者本人が賠償義務を負うことになります。

ところで、自動車の運転免許の取得は18歳以上、原付・バイクの運転免許の取得は16歳以上にならないとできません。12歳前後を境に責任能力が認められる傾向にあることからすると、交通事故の加害者が車やバイクを運転していたというケースでは、基本的に未成年者本人に責任能力が認められ、未成年者本人が法律上の損害賠償義務を負うということになります。

そうすると、基本的に損害賠償の請求先は未成年者本人ということになりそうですが、前述したとおり、交通事故の損害金を支払えるだけの蓄えや収入は未成年者にないのが通常です。被害者の方にとっては、未成年者本人以外から賠償を受ける手段も欲しいところです。

そこで、以下、未成年者本人以外から賠償を受ける手段を紹介していきます。 まずは、成人同士の交通事故と同様に、利用できる保険関係を確認することが必要です。

利用できる保険を確認

交通事故で加害者が未成年者であった場合、まず確認すべき点は、事故に利用できる保険があるかという点です。

任意保険

未成年者が乗車していた自動車に任意保険がついていれば、任意保険会社に対して損害の賠償を請求していくことが可能です。 また、未成年者が自転車に乗っていた場合でも、個人賠償責任保険に加入されていれば保険会社からの対応を受けることが可能です。

任意保険が適用されるケースでは、未成年者本人から損害を直接支払ってもらうという必要はなくなりますので、最終的に示談に至れば、問題なく示談金が支払われるはずです。

また、被害者の方の過失が大きくなければ、治療費が任意保険会社から病院に直接支払われる(一括対応)ことで、被害者の方は治療費を病院の窓口で支払う必要もなくなるというメリットもあります。

ただし、仮に車両に任意保険契約が締結されていたとしても、当該契約に運転手限定や年齢条件の特約がついている場合など、契約の具体的な内容によっては、保険の対象とならないこともあります。

なお、考えたくはありませんが、未成年者が無免許運転をした場合など、明らかな法律違反がある場合には、任意保険を利用することができないケースがありますので、この点は注意が必要です。

労災保険

会社に雇用されている方が勤務中や出勤途中に交通事故に遭われた場合には、会社が加入している労災保険を利用できることがあります。

労災保険とは、会社に雇用されている人が業務中に怪我をした場合などに、国が会社に代わって給付を行う公的な制度です。交通事故の場合でも、勤務中や出勤中の事故であれば利用が認められることがあります。

労災保険では、被害者の車の修理代などの物的損害や通院慰謝料といったものの補償は受けられませんが、加害者との示談締結前の段階でも治療費や休業補償の給付を受けることができるというメリットがあります。

また、労災保険の場合は、過失割合に関係なく補償を受けることができますので、被害者の方にも一定の過失割合が生じる事故態様の場合には、加害者側の任意保険よりも先行して労災保険による補償を受ける方が得策です。

人身傷害保険や車両保険

加害者側の任意保険が利用できない場合、被害者の方ご自身が人身傷害保険や車両保険に加入しているのであれば、利用するタイミングと考えられます。

人身傷害保険が利用できれば保険会社が治療費を病院へ直接支払ってくれることから、病院の窓口で立替え払いをする必要がなくなります。

また、過失割合に関わりなく一定の賠償を受けることができるというメリットがあります。

なお、ご自身の保険から一定の補償を受けたとしても、法的に十分な賠償までは受け取れないこともあります。この場合は、差額を加害者側に請求することも可能です。

加害者が未成年者で、損害賠償の請求先がすぐに定まらない場合には、ご自身側で加入している保険を確認しましょう。

自賠責保険

加害車両に任意保険が付いていない場合でも、治療費、慰謝料、休業損害といった身体の怪我に関わる損害については、自賠責保険の保険会社に対して請求することができます。

万が一、加害者の車両に自賠責がついていなかった場合や、未成年者が乗車していた車両が盗難車であるため自賠責保険を利用ができない場合には、政府補償事業により補償を受けられることがあります。

ただし、自賠責保険は車の修理代などの物的損害は保険の範囲外ですし、加害者が自転車であった場合には自賠責保険はありません。

何よりも、後遺障害が認められない場合には賠償金額は120万円までという上限が定められてる上、慰謝料の算定基準も裁判所とは異なる独自の計算方法によります。

そのため、交通事故により生じた損害の適切な賠償を受けるという観点からは、自賠責保険だけでは不安が残ります。

未成年者以外の第三者に対する賠償請求

未成年者の雇用主

会社の従業員が仕事中に起こした交通事故の場合、従業員個人だけでなく、雇用主である会社も被害者に対して同様の賠償責任を負うことがあります(民法第715条)。

これを法律上の用語で、「使用者責任」といいます。 未成年者が仕事中に起こした交通事故で、保険から十分な賠償が受けられないケースでは、会社に対する損害賠償請求も検討すべきです。

なお、もし未成年者が運転していたのが社用車であれば、会社が任意保険に加入していることが通常のため、任意保険会社から賠償を受けられることが多いと思います。

車両の所有者に対する請求

未成年者が乗車していた車両の所有者が未成年者とは異なる第三者である場合、その所有者に対し、自動車損害賠償保障法第3条に基づき、運行供用者責任としての賠償請求も可能です。

例えば、未成年者が親や知人の車を借りて運転していた場合には、未成年者本人に加え、その親や知人に対して損害賠償請求をすることが可能となります。

自動車損害賠償保障法は、被害者の保護を目的とした法律で、本来、被害者側で立証しなければならない加害者側の故意・過失の立証責任を軽減するなど、被害者側が賠償を受けるにあたって心強い法律です。

ただし、運行供用者責任に基づき賠償請求が認められるのは、治療費、慰謝料、休業損害といった身体の怪我に関わる損害部分に限られます。被害者の方が乗車していた自動車の修理代などは責任の範囲外となります。

未成年者の親に対する請求

未成年者に責任能力がある場合でも、例えば未成年者が従前から交通ルールを守らず自転車を運転していたことを親が認識していたにも関わらず、指導教育をしていなかったような場合には親の監督義務違反も認め、親に対する賠償義務を認めたケースもあります(東京地方裁判所平成19年5月15日判決等)。

もっとも、未成年者本人に責任能力がある場合にまで、親の監督義務違反が肯定されるケースはあまり多くないと考えられます。

まとめ

交通事故の加害者が未成年者であった場合は、損害賠償を現実的に受けるために、保険関係の確認や請求先の把握を、加害者が成人であるときよりも慎重に行う必要があるといえます。

任意保険などが利用できるケースでは、加害者が成人である場合と実質的な違いはありませんが、保険関係が利用できない場合には、第三者への請求をすることで、賠償金の回収手段を確保しなければなりません。

未成年者本人以外の第三者に対する請求が成り立つか否かは、法的な判断が要求されますので、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

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