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自賠責保険の基礎知識と慰謝料相場

自賠責保険の基礎知識と慰謝料相場

交通事故の被害者は、加害者が加入する保険会社、または加害者本人に対して慰謝料を請求する権利が認められます。自動車保険には「自賠責保険」と「任意保険」があり、任意保険が本人の意思で自由に加入できる保険であるのに対し、自賠責保険は加入が義務付けられる強制保険です。

しかしながら、強制保険であるが故に、自賠責保険がどのような仕組みか知らない方も少なくありません。この記事では、自賠責保険についての基礎知識や慰謝料の相場などについて、交通事故の専門家としての見地から詳しくご説明します。

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自賠責保険の基礎知識

まずは自賠責保険について、基本的な知識を解説します。

自賠責保険の制度趣旨

自賠責保険は、交通事故の被害者に対して最低限度の補償をするために設けられている自動車保険の一種です。交通事故が発生すると、被害者には治療費や入院付添費用、交通費、休業損害、逸失利益、慰謝料など、その他様々な損害が発生します。特に、死亡事故や後遺障害が残る交通事故に遭った被害者は、甚大な損害を被ることになります。

交通事故の被害者は、そのような損害に対する賠償金を加害者本人や加害者の保険会社に対して請求する権利が認められます。しかし、加害者に賠償金を支払う資力がなく、保険にも加入していなければ、被害者が救済を受けられない状況が発生しかねません。そのため、交通事故の被害者が最低限度の補償を必ず受けられるよう、自動車を利用する全ての運転者が加入を義務付けられる「自賠責保険」の制度が設けられています。

自賠責保険に未加入の場合

自動車を運転する全ての人が自賠責保険への加入を義務付けられていることは、自動車損害賠償保障法によって定められています。そのため、自賠責保険に加入していない車両を運転した場合、運転者は1年以下の懲役または50万円以下の罰金刑の処罰を受ける可能性があります(自動車損害賠償保障法第86条の3第1号,同法第5条)。

参照:”法庫”.自動車損害賠償保障法.(2018年4月20日).

また、自賠責保険に未加入の車両を運転した場合の行政処分の点数は「6点」ですので、一度の違反で免許停止となります。

参照:”警視庁”. 点数制度.(2018年4月20日).

自賠責基準とは

交通事故の被害者が賠償金を受け取る際、同じような事故の内容にも関わらず、賠償金額が異なると不公平感を生んでしまいます。そのため、交通事故の損害賠償額は一定の計算基準を用いて算出されています。

損害賠償の計算基準には「自賠責基準」、「任意基準」「弁護士基準」の3種類が存在しますが、本記事では、自賠責保険における損害賠償計算基準である、「自賠責基準」について詳しく解説します。

その他の「任意基準」と「弁護士基準」については、「交通事故の3つの賠償基準」を参照ください。

自賠責基準の保険金

自賠責保険は被害者に対する最低限度の補償を目的とする保険ですので、自賠責基準によって計算される保険金の額は、裁判で認められる金額を参考にした「弁護士基準」よりも小さく設定されています。

自賠責基準によって計算される保険金には限度額も設けられており、自賠責保険からの受取金だけでは、被害者が受けた損害の全額には足りないことが多いです。自賠責基準のより詳細な情報については、以下のページをご参照ください。

参照:国土交通省“. 自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準. (2018年4月25日).

自賠責基準を超える分の請求先

交通事故によって発生した損害額が自賠責保険から支払われる金額を超えている場合、不足する分は加害者の任意保険会社が負担します。また、加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者本人が負担することになります。そのため、自賠責保険と実際に発生した損害の差額が大きくなるほど、加害者の任意保険や加害者本人の負担額が大きくなります。

加害者が任意保険に加入していれば任意保険会社が差額の支払いに対応しますが、加害者が任意保険に加入しておらず、かつ加害者に資力がない場合には、賠償金の請求が難しくなります。

損害賠償金が支払われる流れ

交通事故における損害賠償は、まずは自賠責保険が最低限の金額を負担し、それを超える部分を任意保険もしくは加害者本人が負担する仕組みになっています。しかし実際には、任意保険が自賠責保険の負担部分についても被害者にまとめて支払い、後に任意保険から自賠責保険に対して負担部分を請求するという対応を行っています。

そのため、被害者が自賠責保険会社と任意保険会社それぞれに対して別々に請求することは多くありません。ほとんどの場合、被害者は任意保険会社のみと示談交渉を行い、任意保険会社から損害賠償金の全額が支払われます。

交通事故の慰謝料の種類

次に、交通事故の被害に遭った際、自賠責保険から支払いを受けることの出来る慰謝料の種類を紹介します。慰謝料には「入通院慰謝料」、「後遺障害慰謝料」、「死亡慰謝料」の3種類があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、交通事故で被害者が負傷したために、入通院治療を余儀なくされたことで発生する慰謝料です。被害者は怪我の治療のための入通院に伴い精神的苦痛を受けることになるため、慰謝料の請求が認められます。また、入通院慰謝料は治療期間が長くなるほど高額になります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、交通事故で被害者が負傷し、後遺障害が残った場合に発生する慰謝料です。後遺障害が残って身体の機能が不自由になると、被害者は強い精神的苦痛を感じることになるため、請求が認められます。後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の程度を表す「等級」が高いほど高額になります。

死亡慰謝料

死亡慰謝料は、交通事故で被害者が死亡したときに発生する慰謝料です。仮に被害者が事故で即死した場合でも、被害者には死亡前に慰謝料が発生し、発生した慰謝料が被害者死亡に伴い相続人に相続されると考えられています。死亡慰謝料の金額は、被害者の家族における立場や被扶養者の有無、人数によって異なります。また、被扶養者が多いと死亡慰謝料も増額されます。

自賠責保険から支払われる慰謝料の金額

それでは、自賠責保険から支払われる慰謝料は具体的にどの程度の金額になるのでしょうか。入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料それぞれについて、具体例を挙げながら解説します。

入通院慰謝料の計算方法

自賠責保険における入通院慰謝料は、入通院期間に応じて計算されます。計算式は「4,200円×治療期間(日数)」です。治療期間については、以下の少ない方を採用して計算されます。

  • 初めて治療を受けた日から治療を終了した日までの日数
  • (実際に入通院して治療を受けた日数)×2

※①については例外があり、事故日から初診日までが7日以内のケースでは事故日から起算します。初診日が8日目以降になる場合、初診日から数えて7日前の日を起算日とします。また、治療期間の最終日については、「完治」せず「治療中止」や「治癒見込み」などとなっている場合、最終日に7日を足して計算します。

それでは、具体例を挙げながら計算方法を考えてみましょう。

入通院慰謝料の具体例

■具体例1

治療開始から終了までの期間:70日
実際に入通院して治療を受けた日数:40日

この場合、治療開始から終了までの期間である「70日」と、実際に治療を受けた日数×2である「80日」が比較され、より少ない日数である「70日」が計算に採用されます。その結果、入通院慰謝料は「4,200円×70日=294,000円」となります。

■具体例2

治療開始から終了までの期間:70日
実際に入通院して治療を受けた日数:30日

この場合、治療開始から終了までの期間である「70日」と、実際に治療を受けた日数×2である「60日」が比較され、より少ない日数である「60日」が計算に採用されます。その結果、入通院慰謝料は「4,200円×60日=252,000円」となります。

以上2つの例から分かるように、自賠責基準によって入通院慰謝料を計算する場合、通院の頻度が低いと慰謝料が減額されてしまう可能性が高くなります。

自賠責保険における後遺障害慰謝料

次に、自賠責保険で認められる後遺障害慰謝料の金額を紹介します。後遺障害慰謝料は後遺障害の等級によって定められており、各等級の後遺障害慰謝料の金額は以下の通りです。

■後遺障害の等級と慰謝料の一覧

  1級:1,100万円
  2級:958万円
  3級:829万円
  4級:712万円
  5級:599万円
  6級:498万円
  7級:409万円
  8級:324万円
  9級:245万円
10級:187万円
11級:135万円
12級:93万円
13級:57万円
14級:32万円

自賠責保険における死亡慰謝料 

自賠責保険の死亡慰謝料は、被害者本人の慰謝料と遺族の慰謝料に分けて計算されます。

まず、被害者本人の慰謝料は、一律で350万円です。さらに遺族の人数に応じて慰謝料が加算されます。遺族が1人なら550万円、2人なら650万円、3人なら750万円となります。さらに、被害者に被扶養者がいた場合には、慰謝料の金額が200万円ずつ加算されます。

■自賠責保険における死亡慰謝料の金額

被扶養者なし

被扶養者あり

遺族なし

350万円

遺族が1人

900万円

1,100万円

遺族が2人

1,000万円

1,200万円

遺族が3人

1,100万円

1,300万円

なお、被害者の「遺族」として認められるのは、被害者の両親(養父母を含む)、配偶者と子ども(養子、認知した子ども、胎児を含む)です。法定相続人の範囲とは異なる可能性があるので、注意が必要です。

弁護士基準との比較

以上のように、自賠責保険によっても一定額の慰謝料が支払われますが、自賠責保険によって支払われる慰謝料の金額は、被害者が本来受け取る権利を有している「弁護士基準」の計算結果よりもかなり小さくなります。各種慰謝料の金額が自賠責基準と弁護士基準でどの程度異なるのか、以下で比較をしてみましょう。

入通院慰謝料の比較

弁護士基準は、法的な根拠のある損害賠償金の算定基準です。弁護士が示談交渉をする際に用いられるため、「弁護士基準」と呼ばれます。また、交通事故の損害賠償請求訴訟を起こした場合、裁判所も弁護士基準を用いて計算するため、「裁判基準」と呼ばれることもあります。自賠責基準と弁護士基準で入通院慰謝料がどの程度異なるかは、以下の比較表をご参照ください。

■弁護士基準と自賠責基準の入通院慰謝料比較表

自賠責基準の入通院慰謝料

弁護士基準の入通院慰謝料

通院3か月(実通院日数30日)

252,000円

73万円

入院1か月、通院2か月(実治療日数60日)

378,000円

98万円

※弁護士基準の金額は赤本を基準としており、地域によっては金額が異なることがあります。

後遺障害慰謝料の比較

後遺障害慰謝料については、各等級の後遺障害慰謝料の基準額を一覧で比べてみると、弁護士基準の方が高額な慰謝料を受け取れることが分かります。弁護士基準で計算すると、後遺障害慰謝料の金額は、自賠責基準の2~3倍程度となります。

■弁護士基準と自賠責基準による後遺障害慰謝料の比較表

後遺障害等級

弁護士基準の後遺障害慰謝料

自賠責基準の後遺障害慰謝料

1級

2,800万円

1,100万円

2級

2,370万円

958万円

3級

1,990万円

829万円

4級

1,670万円

712万円

5級

1,400万円

599万円

6級

1,180万円

498万円

7級

1,000万円

409万円

8級

830万円

324万円

9級

690万円

245万円

10級

550万円

187万円

11級

420万円

135万円

12級

290万円

93万円

13級

180万円

57万円

14級

110万円

32万円

死亡慰謝料の比較

弁護士基準で計算される死亡慰謝料の金額は、被害者の立場などによって異なります。弁護士基準で計算された場合の死亡慰謝料の相場は以下の通りです。(赤本と基準とする)

■被害者が一家の家計を支えていた場合:2,800万円程度
■被害者が配偶者や母親であった場合:2,500万円程度
■それ以外の場合(独身者や未成年など):2,000万円〜2,500万円程度

具体例を交えて、自賠責基準で計算された場合の死亡慰謝料の金額と比較してみましょう。

■弁護士基準と自賠責基準の死亡慰謝料の比較

自賠責基準の死亡慰謝料

弁護士基準の死亡慰謝料

被害者が妻と1人の子どもを扶養していたケース

1,200万円

2,800万円

被害者が独身で両親がいるケース

1,000万円

2,000万~2,200万円

弁護士基準で計算された場合、自賠責基準と比較して2倍以上の金額になり、1,000万円以上の差が生じることが分かります。

慰謝料の支払いを受ける時期

次に、自賠責保険における慰謝料の支払いを受ける時期についてご説明します。

任意保険から支払われる場合

一般的に、自賠責保険の保険金支払いについては任意保険会社が一括対応するため、自賠責保険の慰謝料も任意保険からまとめて支払われます。任意保険会社が慰謝料を支払うのは「示談が成立した時」になるため、自賠責保険の慰謝料も任意保険との示談が成立した時点で受け取ることになります。

示談が不成立となり調停や訴訟等の手続きを利用したケースでは、そういった手続きが終了して賠償金が支払われるタイミングで自賠責保険の慰謝料も支払われます。

被害者請求を利用する場合

ただし、被害者自身が自賠責保険に保険金を直接請求する場合はこれに限りません。たとえば、後遺障害等級認定請求をする際、被害者が加害者の自賠責保険に直接手続きを行う「被害者請求」を利用することがあります。その場合には任意保険会社が関与しないため、後遺障害の等級と保険金額が決定した段階で、自賠責保険から直接被害者に対して等級に応じた慰謝料が支払われます。

また、加害者が任意保険に加入していない場合にも、被害者自身が加害者の自賠責保険に直接保険金を請求することとなります。この場合にも、自賠責保険において保険金額が決定した段階で、直接被害者に対して保険金が支払われます。加害者本人との示談が成立するのを待つ必要はありません。

被害者請求をする場合、複雑な手続きが必要となり手間がかかりますが、示談成立を待たずに自賠責保険金を受け取れるというメリットがあります。

自賠責保険における慰謝料以外の損害賠償

交通事故の損害賠償として、「慰謝料」は一般的に広く認知されていますが、慰謝料は数多い損害賠償の費目の中の一つに過ぎません。実際には、その他にも様々の費目の損害賠償を請求することができます。交通事故被害者が受け取ることのできる損害賠償の費目には、以下のようなものがあります。

■治療費
■付添看護費
■入院雑費
■器具・装具の費用
■葬儀費
■休業損害
■逸失利益(後遺障害・死亡)
■文書取り寄せ費用、各種の雑費

慰謝料以外にも上記のように様々な種類の損害賠償金を受けとることができるため、交通事故に遭った際には、具体的にどのような損害が発生しているのかを確認して、漏れなく請求を行うことが重要です。

自賠責保険についての注意点

最後に、自賠責保険について注意すべきことを2点ご紹介します。

自賠責保険からの支払い金額の方が大きくなる場合

自動車保険には「自賠責保険」と「任意保険」の2種類があり、自賠責保険による支払い金額は、任意保険による支払い金額よりも小さくなることが一般的です。しかし、被害者に重大な過失がある交通事故では、自賠責保険からの支払い金額の方が任意保険よりも大きくなることがあります。

任意保険の場合、被害者の過失が大きければ損害賠償金も大きく過失相殺され、被害者が任意保険会社に請求できる金額が大幅に減額されることがあります。例えば、任意保険に損害賠償を請求する場合、被害者に8割の過失割合があれば、損害賠償金も8割減額されます。

一方、自賠責保険はそもそも被害者の救済を目的として制度であるため、任意保険と比較して過失相殺による損害賠償金の減額が少なく設定されています。そのため、被害者に大きな過失があったとしても、自賠責保険からは大きな金額を受け取れます。自賠責保険における過失相殺の制度を「重過失減額」といい、その減額の割合は以下の通りです。

被害者の過失割合

後遺障害や死亡の保険金

傷害の保険金

7割未満

減額なし

減額なし

7割以上8割未満

2割減額

2割減額

8割以上9割未満

3割減額

2割減額

9割以上10割未満

5割減額

2割減額

自賠責保険から保険金を受け取る場合、被害者の過失割合が7割未満であれば過失相殺によって減額されることはありません。過失割合が7割を超える重大な過失があった場合でも、任意保険と比較してそれほど大きく減額がされないことが分かります。被害者に過失がある交通事故において、過失割合の扱いは自賠責保険と任意保険に大きな違いがあることを知っておきましょう。

加害者が自賠責保険に加入していない場合

自賠責保険は強制加入の制度なので、本来であれば全ての運転者は必ず加入する必要があります。しかし、中には法律を無視して自賠責保険に加入せずに運転するドライバーも存在します。そのような運転者との間で交通事故が発生した場合は、自賠責保険への保険金請求ができません。

加害者が自賠責保険に加入していない場合の対応として、「政府保障事業」を利用する方法があります。政府保障事業とは、加害者が自賠責保険に加入していないケースや、ひき逃げで加害者が不明なケースなどで、被害者が自賠責保険からの最低限の保障すら受けられないときに、政府が被害者を救済するための制度です。

政府保障事業を利用すると、国から被害者に対して「てん補金」が支払われます。てん補金は自賠責基準によって計算されるため、金額が小さくなり損害の全額には満たないことが多いですが、加害者との示談交渉が長引きそうであれば、まずは政府保障事業によっててん補金を受け取るのも選択肢の一つです。てん補金を受け取った上で不足があれば、その後に時間をかけて損害賠償請求手続きを進めると良いでしょう。

加害者本人と示談交渉を進める場合は、加害者が話合いに応じないなど、手続きが滞ることも珍しくありません。お困りの際には専門の弁護士が丁寧に対応しますので、お気軽にご相談下さい。

最後に

この記事では、自賠責保険についての基礎知識や慰謝料の相場などについて解説しました。自賠責保険からも入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料を受け取ることができますが、一般的に、どの慰謝料も「弁護士基準」によって計算された慰謝料と比較すると相当少額になります。

「弁護士基準」による十分な金額の慰謝料を受け取るためには、弁護士が示談交渉を対応させていただく必要があります。交通事故の被害に遭われてお困りの方は、弁護士法人いろはの交通事故に特化した弁護士がサポート致しますので、まずは一度ご相談ください。

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