保険

「自賠責保険」と「任意保険」の違いとは?

「自賠責保険」と「任意保険」の違いとは?

車やバイクの購入時や車検の際に、強制加入である自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」といいます)の費用も一緒に請求され、加入手続きがなされているのをご存じの方も多いと思います。

他方、自賠責保険とは別に「任意保険」と呼ばれる自動車保険が各損害保険会社から販売されています。

では、自賠責保険の加入だけでは交通事故時の補償としては不十分なのでしょうか。自賠責保険と任意保険のそれぞれの補償範囲や保険金額等の違いについて、交通事故を専門とする弁護士が解説いたします。

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強制か任意か

自賠責保険は自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」といいます)の第5条で以下のように定められていて、自動車を保有する人に対して加入が義務づけられています。これが一般に「強制加入」といわれる所以です。

自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない

自賠責保険料は、自家用乗用車(普通車)の場合、36か月で3万5,950円、24か月で2万5,830円と設定されています(令和元年度)。

一方、任意保険はその名のとおり、加入するかしないかは、自動車保有者の意思に任されています。保険料も、各損害保険会社の商品によって様々に設定されています。

交通事故によって保険を使用した場合に、契約更新時に保険料が上がったり、逆に、無事故であったり、交通事故があったとしても保険を使用しなかった場合に、契約更新時に保険料が割引になったりする仕組みをとっていることが特徴的です。

補償の範囲

交通事故による被害者に対する最低限度の補償を目的とした自賠責保険の対象は、原則として人的損害のみとなっていて、物損への補償はありません。具体的には、被害者の治療費や慰謝料、後遺障害慰謝料等に対する補償です。

一方、任意保険の場合、一般的に、人的損害のみならず、ほとんどの商品で物損も補償の範囲としています。

保険金額

自賠責保険

自賠責保険の保険金額は自動車損害賠償保障法施行令(自賠令)第2条により、次のとおり上限額が定められています。

死亡に対する補償:3,000万円
被害者が死亡したときに、葬儀費、逸失利益、死亡慰謝料として3000万円を上限として補償を受けることができます。

傷害に対する補償:120万円
被害者が怪我をしたときに、治療関係費(治療費、通院費、看護料、入院雑費、診断書作成料等)、休業損害、慰謝料等について、120万円を上限として補償を受けることができます。

後遺障害に対する補償:75万円~4,000万円
治療を尽くしたものの、被害者の身体に怪我の症状が残り、後遺障害として等級認定(1~14級)を受けた場合、後遺障害に対する慰謝料や逸失利益(後遺障害がなければ将来得られたであろう収入の減少分)として、等級に応じて、75万円~4,000万円の補償を受けることができます。

例えば、交通事故による怪我で多い、むち打ち症状が残った場合、後遺障害として14級または12級の認定を受けることがありますが、14級は75万円、12級は224万円とされます。

支払事由保険金額
死亡上限 3,000万円
傷害上限 120万円
後遺障害(自賠令別表第1 1級、2級)4,000万円(1級)、3,000万円(2級)
後遺障害(自賠令別表第2 1~14級)3,000万円(1級)~75万円(14級)

任意保険

以上のとおり、自賠責保険から支払われる保険金には上限があり、裁判で現実に認定される高額の損害賠償額を賄えないことも想定されます。

ですから、自賠責保険の補償範囲を超える部分を賄うための任意保険においては、一般的に、被害者に対する補償である対人賠償、対物賠償ともに上限を設けない無制限とする契約が多いでしょう。

すでに説明したように自賠責保険の保険金は上限があり、裁判等でその他、特約ごとに、保険金額が設定されていますので、どのような場合にいくら補償を受けることができるのか、ご自身の任意保険契約をご確認いただきたいと思います。

請求手続き

自賠責保険

自賠責保険に対して請求する方法は、請求主体により2つに分けられます。

被害者請求

被害者が直接、加害者が加入している自賠責保険に対して、保険金を請求する手続きです。自賠法第16条に規定されていて、一般的に「被害者請求」とか「16条請求」と呼ばれます。加害者との間で争いがある場合や、加害者が任意に損害を支払ってくれない場合等に比較的早期に賠償を受けることができます。

加害者請求

加害者が、被害者に対して損害賠償を行った後に、加害者自身が加入する自賠責保険に対して保険金を請求する手続きです。自賠法15条に基づくもので、一般的に「加害者請求」とか「15条請求」と呼ばれます。

任意保険

一般的に、加害者が契約している任意保険の損害保険会社に請求することになります。加害者が任意保険に加入していない場合の対応については、後ほど説明いたします。

過失相殺

交通事故が発生した原因に対する双方の当事者の責任(不注意、過失)の割合を、一般的に過失割合といいます。

どちらの当事者にどれくらいの不注意、過失があったのかを数値の大きさで表現するもので、この割合によって、被害者が得られる損害賠償の受取額が減額されることがあります(これを「過失相殺」といいます)。

例えば被害者の過失が10で加害者の過失が90の割合であると評価され、被害者が被った損害が合計100万円だった場合、被害者にも10%分の過失がある(逆にいうと10%分については加害者の責任ではないということ)として、損害額の合計から10%を控除した90万円が、加害者が被害者に支払うべき損害額となります。

自賠責保険と過失相殺

自賠責保険では、被害者に7割以上の重い過失がある場合にのみ、被害者の損害額の合計から2割~5割減額して保険金が支払われます。つまり、被害者の過失割合が7割未満の場合は、自賠責保険から受け取る保険金について、過失相殺されることはありません。

被害者の過失割合後遺障害又は死亡傷害
7割未満減額なし減額なし
7割以上8割未満2割減額2割減額
8割以上9割未満3割減額2割減額
9割以上10割未満5割減額2割減額

 また、傷害による損害額が20万円未満の場合は、その額が支払われますが、減額により20万円以下となる場合は、20万円が保険金として支払われます。

なお、被害者に一方的な過失があり、自動車の保有者に責任がない場合は、自賠責保険による保険金の支払いは受けられません。

任意保険と過失相殺

被害者に過失割合がある場合、加害者の加入する保険会社から支払われる保険金は、たとえ、被害者の過失割合が10%と低いものであっても、被害者の過失割合に応じて、過失相殺されて支払われることがほとんどです。

一括払制度とは

自賠責保険と任意保険の関係は、最低限の補償である自賠責保険では賄えない部分を任意保険でカバーするという2階建ての構造です。

しかし、加害者が任意保険に加入している場合、一般的に、任意保険会社が、被害者の治療費や慰謝料等の損害賠償についてすべて対応することが多く、被害者が自賠責保険を意識することはあまりないかもしれません。

これは、被害者が、まず自賠責保険に損害賠償を請求して、不足する部分を任意保険に改めて請求するという煩わしさをなくすため、任意保険会社が、自賠責保険から支払われるべき部分も含めて保険金を一括して被害者に支払っているからです(一般に「一括払」「任意一括」などと呼ばれます)。

一括払の対応をした任意保険会社は、被害者に保険金を支払った後、自賠責保険会社に対して自賠責保険金相当額を請求して、被害者に支払った保険金の一部を回収する方法で、自賠責保険を利用しています。

加害者が任意保険に加入していない場合

人身損害について十分な補償を受けられない可能性

交通事故によって怪我をした被害者に対する損害賠償の金額は、治療費や慰謝料等で高額になることが多いです。しかしながら、すでに述べたように、自賠責保険の保険金は上限があり、被害者が受けた損害の全額を自賠責保険のみではカバーできない場合も出てきます。

加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責保険に被害者請求の手続きをして最低限の補償を受ける以外に、不足分を、被害者自身が加入する任意保険の人身傷害特約等で賄うか、加害者本人に直接請求することになるでしょう。

しかし、被害者の人身傷害特約がない場合や、加害者本人に損害賠償を支払う能力がない場合には、十分な賠償を受けることが困難となる可能性があります。

物損の補償を受けられない可能性

また、物損については、先に触れましたように、自賠責保険では対応されませんので、被害者は、加害者に対して直接請求するか、被害者自身が加入する任意保険の車両保険等の補償を受けることを検討しなければなりません。

任意保険への加入を

加害者が任意保険に加入していない場合、被害者として満足のいく補償を受けられない可能性があることについて説明いたしました。

しかし、この記事をご覧のみなさんが、逆に、加害者になってしまい、被害者に対する高額な損害賠償責任を負う可能性も絶対にないとはいえません。

任意保険は、被害者への補償に対応するほか、被害者との示談代行サービスもあり、交通事故で加害者になった際のあなたの負担を軽減してくれます。もしものときの備えとして、任意保険にも加入することをお勧めいたします。

その他の任意保険の補償やサービス

人身事故のみが対象で、支払われる保険金額にも上限がある自賠責保険ではカバーされない損害賠償額を補うために、任意保険が存在しています。

任意保険は、交通事故の相手方に対する支払いをする対人賠償、対物賠償という基本的な補償のほか、契約者自身が補償やサービスを受けることができる様々な特約が用意されています。以下では主なものを紹介します。

人身傷害補償

契約する自動車に乗っていた人の損害について、過失割合等にかかわらず賠償を受けることができます(保険金額は、保険会社ごと、契約ごとに基準や上限があります)。

加害者が任意保険に加入していない場合や、被害者である契約者自身の過失割合も相当程度あるような場合に、この特約の利用を検討すべきでしょう。

車両保険

交通事故等によって被害者が保有する自動車に損害が生じたときに、被害者自身が契約する任意保険から、修理代金等の補償を受けることができる特約です。

加害者が任意保険に加入しておらず、加害者の資力の問題等から十分な損害賠償を受けることが見込めないような場合に、この特約の利用を検討すべきでしょう。

ただし、特約の利用により、保険の契約更新時に等級や保険料に影響がでることがあります。

弁護士費用特約

加害者や加害者の加入する任意保険会社との示談交渉を、弁護士に委任するときの弁護士費用を、被害者が加入する任意保険会社が負担してくれる特約です。

過失割合や損害額等で加害者との間で争いがあるような場合、被害者自身で加害者や加害者の加入する任意保険会社と交渉することは困難を伴います。特約をつける場合の保険料も少額なものがほとんどですから、是非、加入を検討してみてください。

まとめ

自賠責保険と任意保険の特徴や違いについて解説しましたが、高額となりやすい交通事故の損害賠償の場面においては、最低限の補償である自賠責保険の加入だけでは、カバーできないことをご理解いただいたと思います。

まずは、交通事故でご自身が加害者になったときのために、任意保険に加入することをお勧めします。

また、ご自身が被害者となったときに、加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責保険だけでは賄いきれない損害について、加害者に直接請求するのか、それとも自身が加入する任意保険が利用できるのかよく検討する必要があります。

自賠責保険や任意保険の手続きにも精通した交通事故専門の弁護士にお早めにご相談されることをお勧めします。

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