弁護士相談の基礎知識

交通事故を依頼中に弁護士を変更する際の注意点

交通事故を依頼中に弁護士を変更する際の注意点

交通事故に遭って弁護士に依頼したものの、本当にこの弁護士でよかったのかなと疑問に思っている方、あるいは、今依頼している弁護士がなんだか頼りないので、別の弁護士に変えたいと思っている方もおられるかもしれません。

もっとも、いざ弁護士を変えようと思ってもどうすればいいか分からない。また、費用やこれまでの状況についても、弁護士を変えることによって不利益があるのではないか、など色々不安に思われることもあるでしょう。

この記事では、交通事故の依頼者が弁護士を変更する際の注意点を中心にご説明します。

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弁護士の変更に遠慮は不要

依頼者と弁護士との関係は、法律の言葉でいうと「委任契約」となりますが、委任契約は、その当事者がいつでも解除することができると法律で規定されており(民法651条1項)、弁護士と依頼者との委任契約でも、これが妥当します。

人生の大事な場面で、ご自身の悩み事を相談するわけですから、その関係において不安を感じることがあれば、是非とも解消すべきでしょう。

弁護士を変更することも、その不安を解消する1つの方法ですから、依頼中の弁護士に遠慮する必要はありません。ご自身が安心して任せられる状況を確保することが何より大切です。

弁護士の変更を検討すべきケース

では、どのような場合に弁護士の変更を検討すべきでしょうか。

色々な状況が考えられますが、以下では、交通事故の被害者の方が弁護士の変更を検討すべき典型的な例を見てみます。

交通事故を専門的に扱っていない

弁護士は多くは交通事故事件を取り扱った経験がありますが、交通事故事件の経験があることと専門的に取り扱っているということは、大きく異なります。弁護士には、明確に「専門」という制度はありませんが、事務所として専門に扱っている分野があります。

交通事故事件では法律の知識はもちろんのこと、車の構造に関する知識や、物理的・工学的な視点、医学的な知識、さらに健康保険や労災保険などの他の制度に関する理解も求められます。

このような、交通事故事件特有の知識を有しているかは、最終的に解決に導くにあたりとても重要であることは言うまでもありません。

依頼中の弁護士の交通事故事件に対する理解について不安を感じた場合には、弁護士の変更を検討すべきでしょう。

状況の報告がない

交通事故の被害者にとって、人生の大事な場面で、今の悩みや今後の不安などを相談して解決を依頼するわけですから、ご自身が今どういう状況に置かれているのか、その都度知りたいと思うことでしょう。

示談交渉を進めると連絡があったものの、それから2か月間連絡が無いなどとなると、今どうなっているのか、何か問題が発生しているのではないかなど、色々心配になってしまいます。

交通事故による今後の不安を少しでも和らげたいとの思いで弁護士に依頼したのに、その弁護士から報告がなくて不安になるということは本末転倒というべきです。そのような場合には、弁護士の変更を検討すべきでしょう。

コミュニケーションが取れない

弁護士とうまくコミュニケーションが取れないという悩みもよくお聞きします。コミュニケーションが取れない理由は、そもそも連絡がつかない、電話をしても折り返しがない、ちゃんと話を聞いてくれない、態度が横柄だ、など様々です。

弁護士と依頼者との関係は委任契約であり、そこには信頼関係が前提として求められます。それは当然ながら人と人との関係ですし、交通事故事件では、交通事故被害にあった怖さやケガの辛さ、今後の不安まで、きちんと弁護士に打ち明けて相談できるかどうかが重要になってきますから、そのような依頼者の気持ちを真摯に聞いてくれるかという点はとても重要です。

人生において、弁護士に事件を依頼するということはそう多くないでしょうから、そのような大事な局面で「この人に任せたい!」、「この人に任せて良かった!」と思えるかどうかは何より重視すべきです。この点に不安を感じるのであれば、弁護士の変更を検討すべきでしょう。

弁護士を変更する場合の流れ

では、いざ弁護士を変更する場合に、実際にどのような流れになるのでしょうか。

新しい弁護士を決める

弁護士を変更する場合には、まず、新たに依頼する弁護士を決める必要があります。交通事故事件を弁護士に依頼している被害者の方が、弁護士を途中で変更する場合に、必ず先に新たな弁護士を見つけておかなければならないということではありません。

しかし、新たな弁護士を見つける前に今の弁護士を解任(委任契約を終了)してしまうと、被害者の方の代理人として窓口となる者がいなくなってしまいます。これにより、加害者やその保険会社の担当者からの連絡が、被害者の方に直接入ることになってしまいます。

弁護士を途中で変更する場合には、弁護士に依頼している状態を途切れさせないように、まずは新しい弁護士を決定し、その弁護士に引き受けてもらえるかを確認しておきましょう。

従前の弁護士への連絡

その上で、今依頼している弁護士へ、解任の意思を伝えましょう。そうはいうものの、今依頼している弁護士へ、解任したいということを伝えるのは、なかなか言い出しにくいことでしょう。

そのような場合には、新しい弁護士から先に連絡を入れてもらえるか確認してみるのも良いでしょう。

新しい弁護士から今依頼している弁護士に連絡を入れてもらい、引継も含めて対応をしてもらえるというケースも少なくありません(ただし、委任契約の終了にあたり、依頼者ご本人から直接解約の意思を確認する必要があると言われるケースもあります。)。

新しい弁護士への引継

以上の流れを経て、新たな弁護士への変更が決まれば、弁護士間でこれまでの資料や交渉経過の引継をしてもらいましょう。

事案によっては、これまでの資料が膨大であったり、交渉経緯の引継には交通事故の専門知識も必要ですので、弁護士間で直接引継をしてもらいます。

弁護士を変更する場合の注意点

ここまで、弁護士を途中で変更した方がいいケースや、変更する場合の流れを見てきましたが、実際に途中で弁護士を変更する場合の注意点がいくつかあります。

従前の弁護士の変更理由を認識すること

弁護士を途中で変更するからには、より信頼できる弁護士に依頼しなければ意味がありません。

新たな弁護士を探す段階で、法律相談をいくつか受けることになるでしょうが、その際にも、今依頼している弁護士に不足していると感じているものは何かを明確にしなければ、より良い弁護士を決めることはできません。この点を明確にし、法律相談時に伝えましょう。

今の弁護士に対して抱いている不安・不満を伝えることで、新たに依頼する弁護士は、その点を強く意識して対応することが期待できます。

なお、弁護士費用特約に加入されている方であれば、通常、1事故につき10万円までの法律相談費用が支払われますし、現に弁護士に依頼中の方に対しても、無料で法律相談を実施している法律事務所もあります。ご自身の満足のいく弁護士選びができるよう、これらの法律相談をご活用ください。

解約時の弁護士費用の精算

着手金については、基本的には返還されることはありません。

報酬金については、事件が解決していない段階で解約する以上は発生しないと思っている方も多いかもしれませんが、そうとは限りません。

例えば「委任事務の進行状況に応じて10万円を限度としてお支払いいただきます。」などと規定されていることもあります。弁護士の変更を検討される場合には、必ず委任契約書をご確認ください。

このような費用に関することは、弁護士費用特約に加入している場合には特に気にしなくて良いこともあります。しかし、弁護士費用特約に加入している場合でも、通常は1事故あたり300万円と上限が決められており、これを超える場合には被害者の方の自己負担が発生します。

例えば、初めに依頼した弁護士に対し、弁護士費用特約から50万円の着手金が既に支払われていた場合、後任の弁護士の費用に充てることができるのは残りの250万円となります。

また、上限は300万円とされていても、その範囲であればすべて支払われるとも限りません。弁護士を変更する場合には、後任の弁護士に、弁護士費用特約の範囲内で対応してもらえるのか、必ず確認しましょう。

おわりに

依頼者と弁護士とは、信頼関係が重要です。ご自身が信頼して全てを任せられる弁護士に依頼することが何より重要ですし、現に不安を感じているのであれば、遠慮せずに弁護士の変更を検討すべきです。

弁護士を変更する場合には、本稿をご参考にしていただき、また、新たな弁護士を探すにあたっては、「交通事故に強い弁護士の探し方について解説」の稿もご参照ください。

交通事故の被害に遭われた方が、安心して任せることのできる弁護士を選任する、その一助となれば幸いです。

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