交通事故の基礎知識

交通事故証明書の申請方法と内容に関する徹底解説!

交通事故証明書の申請方法と内容に関する徹底解説!

交通事故証明書は交通事件の出発点です。交通事件については、まず、事故の発生した日時、場所、当事者といった基本的な事柄を確認しなければなりません。当事者の記憶は往々にして曖昧になりがちです。その確認を正確にしなければ、その後の対応を誤る危険性があります。

そこで、交通事故証明書によって、それらの事柄を正確に確認することとなります。まさに交通事件の出発点となります。本稿においては、そんな出発点となる重要な交通事故証明書の申請方法や記載内容に関しまして、交通事件を専門とする弁護士から徹底解説させていただきます。

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交通事故証明書の基本的な説明

交通事故証明書とは、そもそもどのような性質の文書か

交通事故証明書とは、警察に事故の届け出がされ、その事故の事実が確認された交通事故について発行される証明書類です。交通事故の被害に遭われた方は、必ずと言って良いほど目にされているでしょう。

交通事故証明書にはどんな事が記載されているのか

そして、交通事故証明書には、まず当然のことですが、事故発生日時と場所が記載されています。そして、交通事故の当事者の氏名、生年月日、住所、電話番号が記載され、さらにはどのような事故態様であったかも記載されます。例えば、追突事故であったり、出会い頭の事故という形式で記載されます。また、車やバイクを運転していた場合には、車種や車両番号も記載されます。もちろん、同乗者が居る場合には、その同乗者の情報も記載されることになります。

交通事故証明書は誰が作成するものか

ちなみに、交通事故証明書は、「自動車安全運転センター」という機関が作成して発行します。この自動車安全運転センターは、「自動車安全運転センター法」(昭和50.7.10法律第57号)に基づいて設立され、安全運転研修の実施、累積点数の通知、運転経歴の証明、交通事故の証明などの事業をおこなっています。

交通事故証明書とは、何を証明するものなのか

交通事故証明書とは、①交通事故が発生したこと、②発生日時、③発生場所、③誰が事故を起こしたか、④乗っていた車両の車種や車両番号、⑤事故類型を主に証明するものです。この証明が出来ないと、実際に事故が本当に起こったかどうか、それがいつ、どこで起きたものかについて、当事者のお話だけを基にすることとなり、不正確になりがちです。それを正確なかたちで記録し、証明しているのが交通事故証明書です。

甲欄と乙欄の違いとは何なのか

一般的には、甲欄が加害者で乙欄が被害者であると言われています。しかし、ここで注意が必要なことは、交通事故証明書は、交通事故の過失割合や事故の原因、過失の有無については、何ら言及していないということです。ですので、甲欄に記載されたからと言って、ただちに法律上過失割合が大きいということにはなりません。その証左に、交通事故証明書の末尾には「なお、この証明は損害の種別とその程度、事故の原因、過失の有無とその程度を明らかにするものではありません。」と記載されています。

交通事故証明書の申請方法

どうやって申請するのか

さて、そんな交通事故証明書はどのように申請するのでしょうか。交通事故証明書は、交通事故発生場所を所管する警察署がある自動車安全運転センターの各都道府県事務所が発行業務を行っています。郵便振替、各々の事務所の窓口やウェブサイトで申請することが出来ます。詳しくは、「自動車安全運転センター」のホームページを確認してみてください。

具体的な申請方法

なお、郵便振替の場合は、警察署や交番で「交通事故証明書申込用紙」を入手してください。警察官に「交通事故証明書申込用紙」が欲しいと伝えれば、用意してくれます。そして、手数料を送金すれば、大体2週間程度で交通事故証明書が郵送されます。

保険会社から交通事故証明書をもらう

また、交通事故証明書については、当事者の保険会社が取り付けることがほとんどですので、保険会社から写しをもらうこともできます。自賠責保険金請求をする場合には、交通事故証明書の原本が必要ですが、その他の手続、例えば、裁判になった場合でも写しを提出することに特段問題がありません。

交通事故証明書はどのような場面で必要となるか

様々な場面で交通事故証明書は活用されます

交通事故証明書は、裁判の提起、調停の申し立ての際はもちろんのこと、交通事故紛争処理センターへの申し立て、自賠責保険会社に対する保険金請求(被害者請求、自賠法16条請求)、実況見分調書や物件事故報告書の取り寄せなど、さまざまな場面で必要とされる書類です。

いつ申請して入手すべきか

そして、冒頭で述べましたとおり、交通事故証明書は、交通事件の出発点です。そして、上記のとおり、様々な場面で必須になる書類です。極めて重要な文書ですので、事故後、出来る限り早期に申請して入手することが望ましいです。

事故発生の届け出の重要性

事故発生の届け出をしないと交通事故証明書が発行されないことがある

肝心なことですが、交通事故に遭われたら、必ず警察に連絡し、事故発生の届け出を行って下さい。事故発生の届け出をしないと交通事故証明書が発行されないことがあります。あなたが被害者であった場合、事故が発生したこと、それによって被害を被ったことを証明する責任を負う者は被害者側、つまりあなたとなります。

交通事故の証明について

したがいまして、交通事故証明書がない場合、交通事故が発生したことをそもそも証明することが困難となります。例えば、後々、裁判になった場合、あなたが交通事故の発生を主張したとしても、相手方が否定した場合、つまり、「そんな事故を起こした覚えはない!」と主張した場合、どのように証明したら良いでしょうか。目撃者も居ない、防犯カメラにも録画映像がないとなった場合、当事者の主張だけで判断することとなります。

交通事故の証明は交通事故証明書が最も大事

しかし、当事者の主張だけですと、言った言わない、やったやっていないの水掛け論になってしまい、結局、交通事故が発生したか否かが真偽不明になる危険性もあります。そして、真偽不明の場合、不利益を被る、つまり交通事故が発生したことを証明出来ずに賠償請求できなくなるのは被害者側です。これを立証責任といいまして、あまり知られていませんが、交通事故発生の事実を証明する責任は被害者にあります。

交通事故の届け出の重要性

他方、交通事故証明書があれば、交通事故発生の証明が容易になり、特に相手方としても争うことはなくなりますから、上記のような不利益が生じることもないでしょう。このような交通事故の届け出をすることは、すなわち交通事故証明書を入手する大前提となる極めて重要な手続です。忘れずにお願いします。

発行期間

なお、交通事故証明書にも発行期間に限りが有ります。あまり知られていませんが、人身事故の場合は事故発生から5年、物件事故の場合は事故発生から3年です。念のため、注意してください。

人身事故にすべきか物件事故のままで良いのか

人身事故と物件事故の違い

交通事故証明書には、その右下に「照合記録簿の種別」という欄があります。ここには、「人身事故」か「物件事故」かの種別を記載することとなります。「人身事故」とは、文字通り、交通事故によって怪我人が出た事故という意味です。他方で、「物件事故」とは、物的な損害のみ発生した事故という意味です。この記載欄を確認することによって、当該交通事故がどのような種別の事故であったかを確認することとなります。

交通事故証明書が物件事故のままになっている場合もある

もっとも、「物件事故」と記載されていたとしても、実際には、被害者が怪我をしている交通事故もあります。怪我をしているにも関わらず、物件事故のままになっている原因は様々あります。例えば、忙しくて診断書を警察に持参して人身事故の届け出をする時間がないまま時間が経過した場合、加害者側が誠意をもって謝罪をしており、刑事罰を加える気持ちがないため、敢えて、物件事故のままにしている場合です。

交通事故証明書が物件事故のままの場合、怪我に関する賠償請求は出来るのか

上記のとおり、被害者が怪我をした場合でも、交通事故証明書の「照合記録簿の種別」欄が「物件事故」になっているケースは、少なからずあります。この場合、よくあるご質問が、「物件事故のままだが、加害者から怪我の賠償金を受け取ることができるか?」といったものです。結論から申し上げますと、交通事故証明書が「物件事故」であったとしても、実際に怪我をして、病院から診断書が発行され、人身被害を説明できれば、加害者側保険会社から賠償を受けることは出来ます。

交通事故証明書が物件事故のままの場合の注意点

もっとも、積極的に人身事故の届け出をした方が良い場合もあります。それは、当事者双方の事故態様の主張に食い違いがあり、過失割合が争いになるケースです。この場合、当事者双方の言い分だけでは、水掛け論になってしまい、どちらの主張が正しいのか判別がつきません。そこで、このような場合には、第三者である公平な視点を持つ警察官が作成した「実況見分調書」(いわゆる現場検証図です)を弁護士が取り寄せ、どちらの主張が客観的な資料に照らし合わせて、正しいのかを調査することとなります。

しかし、この「実況見分調書」は、「人身事故」の場合でないと作成されません。つまり、交通事故証明書が「物件事故」のままだと、極めて簡易な報告書(物件事故報告書といいます)しか作成されません。したがいまして、事故当事者の事故態様に主張の食い違いがあり、あなたが過失割合に納得いかない場合、人身事故の届け出をしておかないと、証拠、つまり「実況見分調書」を入手することが出来ず、不利な認定を受ける可能性があるので要注意です。

人身事故にする場合のデメリット

100:0の事故を除き、事故当事者双方ともに過失があり、双方ともに怪我をした場合等は、例えあなたの方の過失割合が低くても、あなた自身も交通事故(不注意)によって相手を怪我させたことになります。したがいまして、行政罰(免許の点数が減点)や刑事罰(自動車運転過失致傷)の対象となります。これらの罰を受けたくない場合は、人身事故の届け出をすると罰を受ける可能性がありますので、要注意です。場合によっては、(4)で実況見分調書を入手したい場合であっても、物件事故のままにしている依頼者の方もおられます。

まとめ

以上より、交通事故証明書は極めて重要な文書で、その記載内容によって、あなたにとって有利にも不利にも影響するものです。あなた自身が交通事故証明書を申請することは少し煩雑な手続が必要ですが、弁護士費用特約がある方は弁護士が入手しますので、お気軽にご相談ください。また、その記載内容に疑問がある方、物件事故だからといって加害者側保険会社が人身事故として認めず困っておられる方、人身事故にして実況見分調書を入手されたい方は、積極的に弁護士にご相談ください。

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