損害賠償

交通事故慰謝料には税金がかかる?

交通事故慰謝料には税金がかかる?

交通事故で示談が成立すると、加害者側の保険会社から一定の慰謝料等が支払われます。ところで、他人からお金を受け取るような場面では、往々にして何らかの名目で税金がかかってしまうことが多いですが、交通事故の慰謝料を受け取った場合には税金はかからないのでしょうか。

何らかの税金がかかってしまうのであれば、それを知らずに使ってしまい、後から税金を徴収された場合に不意打ちにもなりかねません。予期せず交通事故の被害者となってしまった場合、加害者側との交渉に有利な情報だけでなく、慰謝料と税金の関係についても正確な知識を身につけておく必要があります。

ここでは、交通事故の慰謝料と税金の関係について、徹底解説いたします。

交通事故でお困りの方への『おすすめページ』

相談料0円!いろはの弁護士費用

費用が無料になる「弁護士費用特約」

交通事故を相談する3つのメリット

弁護士法人いろはが選ばれる理由

交通事故慰謝料の自動計算ツール

税金に関する基礎知識

税金のかかる対象

税金とは、儲けた(稼いだ)り財産を得たりした場合に課せられるもので、基本的にプラスになったものに対して課せられるものです。

個人にかかる可能性のある税金

個人にかかってくる可能性のある税金としては、「所得税」「贈与税」が考えられます。

税金についての解説を目的とする記事ではありませんので、細かな説明は省略しますが、所得税とは、個人が収入や所得を得た場合にこれに課せられる税金です。また、贈与税とは、個人から一定の財産を受け取った際に課せられる税金です。

交通事故の慰謝料も、加害者や加害者が加入する保険会社から一定の金額が個人に払われるわけですから、「所得」や「贈与」と考えられる余地があります(なお、生活保護を受給されている方が交通事故の慰謝料を受け取った場合には、収入として取り扱われる可能性があります。)。

それでは、交通事故慰謝料は課税の対象となるのでしょうか?

交通事故慰謝料は課税される?

結論から言いますと、交通事故の賠償として受けとった慰謝料には、金がかかりません。したがって、交通事故慰謝料を受け取った場合でも確定申告は必要ありません。

交通事故慰謝料の性質

これまでに見たとおり、課税の対象となるのは、基本的に「プラスになったもの」に対してです。これに対し、交通事故に代表される不法行為を理由とする損害賠償とは、損害の補填を目的とするものであり、マイナスを回復させるという性質のものです。

交通事故慰謝料も、本来事故に遭わなければ生じることのなかった精神的苦痛に対する補填を目的とする金銭です。そのため、交通事故慰謝料を受け取ったとしても、それは損害に対する賠償を受けたに過ぎないのです。つまり、これは「儲けた」というものではなく、あくまで「マイナスをゼロに戻した(或いは近づけた)」というに過ぎないのです。

慰謝料の課税に関する法律規定

この点に関し、所得税法第9条では、所得税法で非課税とされるものを規定しており、同条17号で「心身に加えられた損害」に基因して取得する保険金が上げられています。

国税庁のホームページでも、交通事故などのために、被害者が心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料などを受け取った場合には、原則として非課税となることが紹介されています。

詳細は国税庁のホームページをご確認ください。

死亡事故の慰謝料の場合

交通事故に関する慰謝料として死亡慰謝料も考えられますが、死亡事故の場合には、交通事故の被害者自身が賠償金を受け取ることはできませんので、その相続人である遺族が受け取ることになります。

しかし、死亡事故の場合であっても慰謝料が課税されることはありません。

死亡事故に対する慰謝料は、上記と同じく、損害賠償金としての性格を有することから、相続により取得したものとみなされる保険金(相続税法第3条1項1号)には含まれないものとして取り扱うこととされています。

遺族固有の慰謝料の場合

死亡事故の場合、被害者自身の慰謝料とは別に、近親者遺族に対して固有の慰謝料が支払われることがあります。例えば、自賠責保険では、被害者の両親、配偶者及び子に対して一定額が遺族固有の慰謝料として支払われます。

このような遺族固有の慰謝料に対しても課税されることはありません。

国税庁の通達でも、非課税とされる「身体の傷害に基因して支払をうけるもの」とは、自身の身体の傷害に基因して支払を受けるものをいうものの、その支払を受ける人と身体に傷害を受けた人(被害者)とが異なる場合であっても、その支払を受ける者が被害者の両親、配偶者又は子などの近しい親族である場合にはこれに当たるとされ、非課税であるとしています。

例外的に税金が課せられる場面

ここまで、交通事故の慰謝料には原則として税金がかからないということを解説してきました。しかし、交通事故に関係して金銭を受領した場合でも、受取り方によっては例外的に税金が課せられる可能性が考えられます。

その一例として、「加害者が反省の念から、相当高額な見舞金を支払った場合」があります。

これまでに見たように、心身に加えられた損害に対する補填として受け取ったものに対しては課税されることはありません。もっとも、非課税となるのは、あくまで「損害に対する補填」として受け取った範囲に限られます。

したがって、損害の補填を超える部分については課税対象とされる可能性があります。この点に関し、国税庁の通達でも、「非課税となる見舞金は、社会通念上それにふさわしい金額のものに限られます。」と明記されています。どこまでが「社会通念上それにふさわしい金額」の範囲であるかの判断は難しく、ケースバイケースと言わざるを得ません。

慰謝料以外の非課税の賠償項目

ここまで、交通事故慰謝料を中心に見てきましたが、交通事故の損害賠償という場面では、慰謝料以外にも支払われるべき損害項目があります。例えば、休業損害に対する賠償金や物損に対する賠償金です。

休業損害

休業損害とは、交通事故で怪我を負ってしまったために仕事を休むことを余儀なくされ、これに伴う減収の損害をいいます。 この休業損害に対する賠償金も、課税の対象にはならないとされています。

交通事故に遭わなければ会社で勤務し、給与が支給されていたわけですが、給与に対しては所得税が課せられます。そうだとすると、給与を得られなかったことに対する賠償として支払われた金員は給与所得と同視され、所得税が課せられる可能性も考えられます。

しかし、国税庁の見解では、慰謝料と同様に、交通事故の休業損害に対する賠償金についても非課税としています。

なお、通勤中に交通事故に遭った場合に労災保険を利用する場合もあり、その場合には労災から休業補償がなされます。この労災給付についても非課税とされています。

物損に対する賠償金

自家用車で交通事故に遭った場合、自家用車の損傷に対する賠償も想定されます。そして、車両が大破し、修理費が時価額を上回る、いわゆる経済的全損の場合には、被害者はその車両時価額を賠償金として受け取ることになります。

この物的損害に対する賠償金も基本的には非課税とされています。もっとも、交通事故により損害を受けた物品が事業用の資産である場合には違った取扱いがされる可能性がありますので、注意が必要です。

人身傷害保険金

人身傷害保険とは、自身の加入する自動車保険による商品です。自動車事故により怪我を負った場合に、自身の過失割合にかかわらず契約内容に沿って人身損害の補填を受けられる保険です。 人身傷害保険による保険金の支払も、前掲の「損害賠償金としての性格」を有するものであり、非課税とされています(国税庁の見解)。

総括

このように、交通事故慰謝料を始め、交通事故に関する賠償金(人身傷害保険からの保険金を含みます。)は、それが損害を補填することに向けられた性質と範囲であれば基本的に非課税とされています。

もっとも、原則として非課税とされる項目であっても、それが社会通念上ふさわしい金額を超える場合には、課税対象となる可能性が出てきます。つまり、交通事故の示談交渉にあたって、金額を任意の項目に振り分けたとしても課税を免れることにはなりません。

事案に応じて、その損害項目に対する賠償金としてどれぐらいの金額が相当かという観点が必要となりますが、それには交通事故の専門的な知識が不可欠です。当然、課税のリスクを恐れて、本来受け取るべき賠償金を受け取らないということはあってはなりません。

交通事故被害者が適切な賠償を受けるという観点からも、交通事故に特化した専門家に相談すべきです。

交通事故でお困りの方への『おすすめページ』

相談料0円!いろはの弁護士費用

費用が無料になる「弁護士費用特約」

交通事故を相談する3つのメリット

弁護士法人いろはが選ばれる理由

交通事故慰謝料の自動計算ツール