政府保障事業制度について解説
交通事故の被害に遭ってしまった場合、普通なら加害者側の保険会社と交渉し、損害賠償金を受け取ります。しかし事故がひき逃げだった場合や相手が無保険の場合は、損害賠償を受けることができません。
それでは被害者側は泣き寝入りするしかないのかというと、そんなことはありません。この記事では、ひき逃げや無保険に対しての政府からの救済制度である政府保障事業制度について紹介します。
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政府保障事業制度とは
政府保障事業制度とは、自賠責保険を補完する各種社会保険でも救済されない被害者のための、政府による救済制度です。政府保障事業制度が対象となるのは、ひき逃げ事故、盗難車による事故、自賠責保険や自賠責共済が付保されていない自動車による事故などです。
被害者が健康保険や労働災害保険、その他社会保険制度で救済を受けることができる場合や、加害者から損害賠償を受けた分については、政府保障事業制度では救済されません。また、請求できるのは被害者のみであり、加害者による請求は認められていません。
政府保障事業の補償内容
政府保障事業は、国土交通省が自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づき、交通事故の被害者を救済するために損害の填補を行う制度です。填補される損害の範囲や限度額については、自賠責保険の基準と同様です。以下では、損害の種類ごとの詳細をご説明します。
傷害事故
支払い限度額:120万円 対象となる項目:治療関係費、休業損害、慰謝料
後遺障害を残した事故
支払い限度額:75万円〜4,000万円 対象となる項目:逸失利益、慰謝料 ※後遺症の程度に応じて認定された等級により、支払い限度額が異なります。
死亡事故
支払い限度額:3000万円 対象となる項目:逸失利益、被害者本人及び遺族への慰謝料、葬儀費
政府保障事業の特徴
1. 自賠責保険と同様、被害者に重大な過失がある場合は、損害填補額が減額される場合があります。※平成19年3月31日以前の事故は、自賠責保険と異なり被害者自身の責任割合分が厳密に差し引かれます。
2. 親族間の事故は補償されません。
3. 社会保険を使用しない場合は、社会保険を使用すれば給付されるであろう金額が差し引かれます。
4. 自賠責保険のような仮渡金の制度はありません。
5. 時効中断の取り扱いがありません。
6. 健康保険や労災保険などの社会保険による給付がある場合には、その額が差し引かれて支払われます。また自賠責保険と異なり、慰謝料部分も控除されます。
7. ひき逃げ車両や無保険車が複数台関わる事故であっても、填補金額の上限は1台分です。
政府保障事業の時効
事故発生日(後遺障害は症状固定日、死亡は死亡日)から3年(平成22年3月31日以前に発生した事故については2年)で請求権は時効となるので、ご注意ください。時効が間近な方は、請求窓口までお早めに相談することを推奨します。
政府保障事業の留意点
国土交通省が填補額を決定し、保険会社などを通して、填補額が支払われるまではおよそ6ヶ月から1年以上かかります。請求までには時間がかかることを念頭に置いておきましょう。
まとめ
この記事では交通事故の相手側が無保険であった場合や、ひき逃げであった場合に利用できる政府保障事業制度について解説しました。
制度の存在自体を知っているかどうかによって、受けられる補償の内容が大きく違ってきます。交通事故被害に備えた予備知識として、覚えておいて損をすることはないでしょう。