示談

示談金の相場と受け取る際のポイント

交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求することが出来ます。多くの場合、被害者は加害者側の保険会社との間で示談交渉を進め、示談が成立すると加害者から「示談金」を受け取ります。この記事では、示談金の内訳や示談金の相場などについて、交通事故の専門家としての見地から詳しく解説します。

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示談金の金額について

交通事故によって発生する損害は、事故の状況によって様々であることから、損害額も事件毎に異なります。つまり,発生した損害の程度及び損害額に応じて示談金は変動します。 示談金がどの程度の金額になるのかを知るためには、示談金にどのような損害が含まれるのか、費目の内訳を知っておくのが良いでしょう。示談金の具体的な内訳は、以下の通りです。

  • ■ 治療費
  • ■ 入院雑費
  • ■ 付添看護費用
  • ■ 器具・装具の費用
  • ■ 介護費用
  • ■ 文書料
  • ■ 休業損害
  • ■ 入通院慰謝料
  • ■ 後遺障害慰謝料
  • ■ 後遺障害逸失利益
  • ■ 葬儀費用
  • ■ 死亡慰謝料
  • ■ 死亡逸失利益

交通事故の内容によって発生する損害としない損害があり、また同じ費目でも金額が大きく異なるケースがあるため、事故のケースに応じて発生した損害を正確に把握することが重要です。

慰謝料の相場

慰謝料は交通事故の被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金ですが、精神的損害の程度は客観的に測れるものではなく、また金額にバラつきが出ると不公平感を生む恐れがあるため、慰謝料の算定には、原則定型的な計算方法が用いられます。

そのため、被害者の性別や年齢、年収や地位などによる金額の変動幅は、基本的には小さくなっています。交通事故の慰謝料には「入通院慰謝料」、「後遺障害慰謝料」、「死亡慰謝料」の3種類があり、以下ではそれぞれの相場について簡単にご紹介します。

入通院慰謝料の相場

入通院慰謝料とは、交通事故で被害者がケガをしたときに発生する慰謝料です。入院や通院をして治療を受けると、治療期間に応じた入通院慰謝料が発生します。

■症状が客観的に確認できる場合
客観的に確認できる症状とは、骨折をはじめ、第三者が画像や検査から認識できる症状のことを指します。

 入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月13月14月15月
通院53101145184217244266284297306314321328334340
1月2877122162199228252274291303311318325332336342
2月5298139177210236260281297308315322329334338344
3月73115154188218244267287302312319326331336340346
4月90130165196226251273292306316323328333338342348
5月105141173204233257278296310320325330335340344350
6月116149181211239262282300314322327332337342346
7月124157188217244266286304316324329334339344
8月132164194222248270290306318326331336341
9月139170199226252274292308320328333338
10月145175203230256276294310322330335
11月150179207234258278296312324332
12月154183211236260280298314326
13月158187213238262282300316
14月162189215240264284302
15月164191217242266286

引用:民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)入通院慰謝料 別表Ⅰ

【表の見方】

  • ・入院1か月のみで完治した場合は53万円
  • ・入院せず通院3ヵ月で完治した場合は73万円
  • ・入院2か月・通院5か月の場合は141万円

※通院期間が長期に渡る場合、実際の通院日数の3.5倍程度の日数が、慰謝料算定のための通院期間の目安とされることもあります。

■むち打ち症のため他覚所見がない場合・軽傷の場合

むち打ち症で客観的に症状が確認できない場合や、軽い打撲や軽い傷といった比較的軽傷の場合は、以下の表を基準として入通院慰謝料を算定します。

 入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月13月14月15月
通院356692116135152165176186195204211218223228
1月195283106128145160171182190199206212219224229
2月366997118138153166177186194201207213220225230
3月5383109128146159172181190196202208214221226231
4月6795119136152165176185192197203209215222227232
5月79105127142158169180187193198204210216223228233
6月89113133148162173182188194199205211217224229
7月97119139152166175183189195200206212218225
8月103125143156168176184190196201207213219
9月109129147158169177185191197202208214
10月113133149159170178186192198203209
11月117135150160171179187193199204
12月119136151161172180188194200
13月120137152162173181189195
14月121138153163174182190
15月122139154164175183

引用:民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)入通院慰謝料 別表Ⅱ

※表の見方は別表Ⅰと同様
※通院期間が長期に渡る場合、実際の通院日数の3倍程度の日数が、慰謝料算定のための通院期間の目安とされることもあります。
※上記のどちらの表を使用するかは、案件ごとに個別に判断します。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺障害が残った場合に認められる慰謝料です。後遺障害が残ると被害者は大きな精神的苦痛を受けるため、後遺障害の程度や内容に応じて慰謝料が支払われます。後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の等級によって異なります。後遺障害の等級には1級から14級までがあり、それぞれの等級における後遺障害慰謝料の相場の金額は以下の通りです。

等級

後遺障害慰謝料の相場

1級

2,800万円

2級

2,370万円
3級

1,990万円

4級

1,670万円

5級

1,400万円

6級

1,180万円

7級

1,000万円

8級

830万円

9級

690万円

10級

550万円

11級

420万円

12級

290万円

13級

180万円

14級

110万円

死亡慰謝料

死亡慰謝料は、交通事故で被害者が死亡したことによって受ける、精神的苦痛に対する損害賠償金です。 死亡慰謝料の金額は、被害者の家族の中での立場や、被扶養者の有無・人数によって異なります。具体的な相場は以下の通りです。

被害者が一家の支柱

2,800万円程度

被害者が母親や配偶者

2,500万円程度

それ以外の場合(独身者や未成年など)

2,000万円〜2,500万円程度

慰謝料が増額・減額される例

以上のように、交通事故の慰謝料には一定の相場が存在しますが、ケースによっては慰謝料の金額が相場よりも高くなったり低くなったりする可能性もあります。以下では、慰謝料が増額される場合と減額される場合について、具体例をご紹介します。

増額されるケース

慰謝料が増額されるのは、以下のような場合です。

被害者が離婚した場合

交通事故が原因で夫婦の関係が悪化したり、重大な後遺障害が残ったりすることが原因で、被害者が離婚に至るケースもあります。このように場合では、慰謝料が増額されやすくなります。

被害者が仕事を失う場合

事故の被害に遭うと、会社を退職せざるを得なくなる場合や、事故の影響で仕事を続けられなくなる場合、自営業者が廃業を余儀なくされる場合なども考えられます。このように、仕事を失うと慰謝料が増額されることがあります。

入学・進級できなくなった場合

被害者が学生の場合、事故によるケガや後遺障害が原因で入学ができなくなることや、進学できなくなってしまう可能性もあります。このような場合にも、慰謝料が増額される可能性があります。

中絶・流産した場合

被害者が妊婦の場合には、交通事故のショックで流産してしまうことがあります。また、事故の治療でレントゲン検査を受けるため、子どもの中絶を余儀なくされるケースもみられます。このようなケースでは、被害者の精神的苦痛が大きくなるため、慰謝料が増額されやすくなります。

加害者に反省がない場合

事故の加害者が反省の色を見せず、重大な事故であるにも関わらず一度も謝罪に来ない場合や、明らかな虚偽を述べて被害者に責任を押しつけようとする場合などには、慰謝料が増額されることがあります。

悪質な事故である場合

加害者が飲酒運転をしていて酩酊状態で死亡事故を起こしたケースや、共同危険行為を行って重大な事故を起こした場合、危険ドラッグを服用しながら運転していた場合などには、慰謝料が通常の事案より高額になる可能性があります。

減額されるケース

反対に、交通事故の慰謝料が減額される可能性のあるケースについても見ておきましょう。

被害者の素因減額

「被害者の素因減額」とは、被害者側の要因によって損害が拡大したときに慰謝料を減額する考え方です。被害者側の事情によって損害が拡大したのであれば、被害者も損害についての責任をとるべきであるという「損害の公平な分担」という考えに基づきます。

被害者の素因には「身体的素因」と「心因的素因」があります。「身体的素因」とは、被害者の持病や既往症など身体的な事情としての素因です。たとえば、椎間板ヘルニアがある被害者がむちうちになったケースや、脊柱管狭窄症という症状がある被害者に神経症状が発症した場合などには、そうした身体的素因によって数十%の素因減額が行われる可能性があります。

また「心因的素因」は、被害者の精神状態によって損害が拡大した場合の問題です。たとえば、被害者がもともと「うつ病」であるために治療効果が上がりにくい場合や、被害者が積極的に治療に取り組まないために治療期間が通常より著しく長くなった場合などにおいて、心因的素因による慰謝料の減額が行われる可能性があります。

過失相殺

被害者に過失があると、過失相殺によって慰謝料が減額されます。「過失相殺」とは、被害者の過失割合に応じて、被害者が加害者に請求できる損害賠償金を減額することです。被害者に過失があると、その分は被害者にも責任を負わせるのが公平であるという考え方にもとづきます。

損益相殺

損益相殺とは、被害者が交通事故を原因として利益を得たときに、その利益に相当する分を損害賠償金から差し引くことです。交通事故が起こると、被害者はさまざまな給付金や補償金、手当などを受けられる可能性がありますが、それらの給付金と損害賠償金の両方を受け取ると、被害者はむしろ利益を得ることになってしまいます。

そのため、被害者が被った損害以上の利益を受けないよう損益相殺によって調整されます。損益相殺の対象になるのは、以下のようなものです。

  • ■ 労災の休業補償金
  • ■ 健康保険の傷病手当金
  • ■ 所得保障契約の保険金
  • ■ 自賠責保険の保険金
  • ■ 政府保障事業のてん補金

逆に、以下のようなものは損益相殺の対象になりません。

  • ■ 香典やお見舞金
  • ■ 生命保険の死亡保険金
  • ■ 搭乗者傷害保険の受取金
  • ■ 自損事故保険の受取金
  • ■ 労災の特別支給金

交通事故の示談金の具体例

以下では、実際に交通事故が起こったときの示談金の具体例をご紹介します。

骨折で入院・通院した場合

まずは、「骨折」で入院・通院した場合の示談金の一例を紹介します。被害者は33歳の男性で年収500万円、治療期間は入院1か月・通院5か月、後遺障害として10級が認定されたとしましょう。この方の場合、示談金の内訳と金額は、以下の通りとなりました。

治療費2,000,000円
通院交通費200,000円
付添看護費用195,000円
入院雑費45,000円
休業損害2,100,000円
入通院慰謝料1,410,000円
後遺障害慰謝料5,500,000円
後遺障害逸失利益21,860,550円
合計33,310,550円

むちうちで通院した場合の示談金の例

次に、むちうちで通院治療を受けたケースにおける示談金の例をみてみましょう。被害者は27歳の女性、年収300万円、治療期間は通院6か月であり、後遺障害14級の認定を受けたとします。他覚症状はなく、痛みやしびれなどの自覚症状しかありませんでした。この場合の示談金の内訳と金額は、以下のとおりとなりました。

治療費1,000,000円
通院交通費200,000円
休業損害700,000円
入通院慰謝料1,160,000円
後遺障害慰謝料1,100,000円
後遺障害逸失利益2,573,850円
合計6,733,850円


交通事故の示談金は、被害者の年齢や年収、怪我の程度、後遺障害の有無や等級によって大きく異なります。上記の例の通り、むちうちでも数百万円以上、骨折なら数千万円単位の示談金を受け取れるケースも珍しくありません。交通事故に遭ったときには、正確に損害賠償金を計算し、適正な金額の支払いを受けることが重要です。

示談金の支払いを受けるタイミング

交通事故の被害者は、事故の発生後すぐに示談金の支払いを受けられるわけではありません。実際に示談金が支払われるのはいつなのか、そのタイミングを知っておきましょう。

示談が成立した場合

交通事故の被害者が示談金を受け取るのは、基本的には「示談が成立したとき」です。示談が成立すると、加害者と被害者が署名・押印して「示談書」を作成しますが、示談書ができれば相手の保険会社から示談金が支払われます。示談を成立させるためには、適切な医療機関で治療を受け、症状固定したタイミングで「後遺障害等級認定」の手続きを行う必要があります。

その後、加害者側の保険会社と示談交渉を進めて、合意ができたときにようやく示談が成立します。特に人身事故の場合では、示談が成立して実際に示談金を受け取ることができるのが、事故発生から相当な時間が経過してからになるケースが多いため注意が必要です。重傷で治療期間が長くなる事例では、数か月から数年の期間を要する場合もあります。

示談が成立しなかった場合

示談金は、示談交渉によって決定された内容に基づいて支払われるお金ですので、示談が成立しない限り支払われることはありません。ただし、示談が成立しない場合でも、調停やADR、損害賠償請求訴訟などの手続きによって、損害賠償自体は受けることが可能です。示談が成立しなかった場合、どのような手続きを取るべきか判断が難しい場合は、交通事故問題の専門家である弁護士としての見地からアドバイス致しますので、お気軽にご相談下さい。

示談金を受け取る際のポイント

最後に、交通事故の被害者が知っておきたい、示談金を受け取る際のポイントを、「弁護士基準を適用する」、「後遺障害等級認定を受ける」、「過失割合を低くする」という3つの観点から紹介します。

弁護士基準を適用する

交通事故における損害賠償金の計算基準には、「自賠責基準」、「任意保険基準」、「裁判基準」の3種類が存在しますが、示談金は「裁判基準」が適用された場合に最も高額になることが一般的です。被害者が自分自身で任意保険会社と示談交渉を行う場合には「自賠責基準」もしくは「任意保険基準」が適用されるため、「裁判基準」の場合と比較して慰謝料や賠償金が低くなってしまう可能性があります。「裁判基準」が適用された示談金を受け取るためには、弁護士に示談交渉を依頼するか、訴訟を起こすなどの方法があります。

後遺障害等級認定を受ける

後遺障害が認定されると、「後遺障害慰謝料」や「後遺障害逸失利益」を受け取ることが出来るため、賠償金が大きく増額されます。そのため、交通事故の被害者にとって「後遺障害等級認定」は非常に重要なポイントとなります。

後遺障害等級は1級から14級まで存在し、受け取ることの出来る賠償金は等級によって大きく異なります。より高い等級の後遺障害認定を受けることが出来れば、より高額な賠償金を受け取ることが出来るため、後遺障害認定の手続きに不安を感じる方は、専門家である弁護士にサポートをご依頼ください。

適正な過失割合を検討する

被害者側の過失割合が大きくなると、過失相殺によって支払われる示談金が減額されてしまう可能性があります。不当に大きな過失割合を割り当てられて、十分な賠償を受けられない事例なども存在しますので注意が必要です。弁護士に示談交渉をご依頼いただければ、適正な過失割合で解決出来るようサポート致しますので、不安を感じられている方はお気軽にご相談ください。

まとめ

この記事では、示談金の相場などについて解説しました。交通事故の被害に遭われた方は、交通事故の損害賠償金の計算方法や相場についても最低限の知識を備えて、十分な補償を受けられるようにしましょう。しかし、被害者が自分自身で示談交渉を行うと、適切な手続きを行えない場合なども多々ありますので、お困りの方はお気軽に弁護士法人いろはまでご相談ください。

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