交通事故 解決事例集
大阪市70代男性の高次脳機能障害(第5級2号)において,紛争処理機構への申立により,既存障害の等級を適切なものに引き下げることに成功した事例
依頼者について
- 年齢
- 70代
- 性別
- 男性
- 住所
- 大阪市
- 受傷部位
- 傷病名
- 高次脳機能障害,外傷性くも膜下出血,頸椎捻挫,後頭部打撲,左肩打撲
- 治療期間
- 8ヶ月
- 後遺障害等級
- 5級2号
- 解決方法
- 訴訟
ご依頼から解決までの期間:
1796日
1796日
前後比較
弁護士ご相談前
後遺障害等級
等級認定前にご相談
弁護士交渉後
後遺障害等級
5級2号 (既存障害9級→紛争処理機構申立により既存障害12級に軽減 )
事故発生~解決まで
- 事故状況
- 本件事故は,信号機により交通整理されている交差点で起きました。
ご依頼者が,青信号で横断歩道を徒歩による横断中,ご依頼者と同一方向に進行していた加害車両が,青信号で右折進入して,激突してきたというものです。
ご依頼者は頭部を車両フロントガラスに強打し,その後,全身を地面に打ち付けられました。
頭部のフロントガラスへの強打,並びに全身の地面への打ち付けに伴う受傷によって,ご依頼者は,高次脳機能障害,外傷性くも膜下出血,頚椎捻挫,後頭部打撲挫創,左肩打撲の怪我を負いました。
- ご相談の経緯
- ご依頼者のご親族から,「医師から高次脳機能障害の可能性があると言われている。病院に入院していたが,退院後は,自宅介護ができないため現在施設へ入所している。とても大きな怪我ですので,今後の賠償について不安があり弁護士へ相談したい。」との連絡があり,法律相談した結果,ご依頼頂くことになりました。
- 弁護士の対応方針
- ご相談の結果,やはり高次脳機能障害が強く疑われる事案でした。
高次脳機能障害において適切な等級を獲得するためには,これが特に複雑困難な障害であることから,弁護士の方で充実した資料を準備したうえで,意見書を作成すべきあると判断しました。
- 解決のポイント
- 後遺障害の申請を行った結果,高次脳機能障害として,5級2号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの)の認定を受けました。
この認定自体は適切なものだったのですが,ご依頼者には,本件事故前から「神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」9級10号に該当する既存障害があったと判断されてしまいました。その主な理由としては,画像上,本件事故以前からの器質的な変化として,記憶障害が生じるような脳萎縮等が認められる,といった点が指摘されていました。
この結果を踏まえ,ご依頼者の親族と協議した結果,事故前に軽度の認知症はあったかもしれないが,日常会話は問題がなく,ビル清掃のアルバイトにも従事しており,自身が買物も行えるなど,およそ「服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」という9級10号に該当するような既存障害は無いとのことでした。
そこで,弁護士としては,まず,上記画像所見について,専門の脳外科医へ意見照会が必要と考え,画像を元に,実際に脳外科医と面談した結果,同医師から,「MRI画像から,加齢性変化としての脳萎縮を認めることができる一方で,それのみから記憶障害の存在を断定することは,到底できない。」との意見を得ました。そのため,自賠責紛争処理機構へ異議申立を行う方針となり,準備を行いました。具体的には,上記医師意見書,アルバイト先雇用主の陳述書,ご依頼者親族の陳述書等を取り付け,事故前のご依頼者の生活状況や仕事の状況を明らかにし,事故前に9級10号の既存傷害がなかったことを主張しました。
結果,自賠責紛争処理機構の判断によって,9級10号の既存傷害の判断は取り消され,ご依頼者の認定損害額が大幅に増額変更されることとなりました。
もっとも,その後の示談交渉においても,相手方保険会社は既存傷害の存在について争ってきたため,裁判提起をしました。裁判所においても既存傷害9級10号の存在が争点となりましたが,結果,9級10号の既存傷害は無かったとの判断を受け,最終的にはご依頼者にとって有利な内容で和解することとなりました。
弁護士のコメント
高次脳機能障害の後遺障害は,それ自体複雑困難で,適切な等級認定を受けるためには専門的な知識や経験が必須となります。本件においても,等級自体は弁護士が作成した意見書をもとに適切な等級認定を受けましたが,既存傷害という新たな争点が出てきたことにより,脳外科医との面談,協議も必要となり,更に,高度は専門性が要求される事案となりました。
高次脳機能障害を負い,適切な治療,症状固定後の適切な等級認定を獲得するためには,弁護士の協力が必要不可欠となります。
本解決事例をご覧になられて,ご自身や,ご家族の方が高次脳機能障害でお悩みであれば,是非,ご相談ください。