交通事故 解決事例集
大阪府大阪市40代男性の、後遺障害等級9級に認定された事例
依頼者について
- 年齢
- 40代
- 性別
- 男性
- 住所
- 大阪府大阪市
- 受傷部位
- 傷病名
- 頭部外傷、頚椎捻挫、右肘打撲擦過創、左手指打撲多発挫創、腰部捻挫、右股関節挫傷 右膝関節内脛骨外顆骨折及び腓骨骨折、右膝関節内外側側副靱帯付着部腓骨小頭骨折
- 治療期間
- 794日
- 後遺障害等級
- 9級
- 解決方法
- 訴訟
ご依頼から解決までの期間:
30.3ヵ月
30.3ヵ月
前後比較
弁護士ご相談前
後遺障害等級
認定前にご依頼
弁護士交渉後
後遺障害等級
9級
事故発生~解決まで
- 事故状況
- テーマパークの駐車場内を出口に向かい歩行中、ゼブラゾーンに進入してきたタクシーに衝突された事故です。
- ご相談の経緯
- ご相談前にお任せされていた弁護士が,後遺障害の等級認定を見据えなければならない段階で,辞任されたとのことでした。タクシー共済の担当者が過失割合をはじめとして威圧的な対応をしていたため、強く交渉してもらえる弁護士を探しているということで、ご相談にいらっしゃいました。
- 弁護士の対応方針
- 1 後遺障害等級
被害者の方には、右脚の膝関節と足関節が曲げにくいという後遺障害が残っていました。このように、関節が曲がらない場合には、なぜ曲がらなくなったのかという原因を医学的に明らかにすることで、「機能障害」という後遺障害が認定されることになります。
骨折を負っていた膝関節は、医師に曲げてもらっても、左側の3/4以下しか曲がりませんでした。これは、第12級の機能障害に該当します。
足関節についても、ご自身では左側の1/2以下しか曲げることができないため、第10級の機能障害を狙うことになります。しかし、足関節には骨折や靭帯の損傷など、関節運動を阻害する所見が、MRIなどの画像検査から獲得できませんでした。また、医師が力を込めれば、より大きく曲がる状態でもありました(機能障害は、医師によって曲げられる関節の可動域角度によって認定されるのが原則です。)。
医療記録を辿ったところ、入院中の検査内容から、下腿を走行する腓骨神経が損傷したことによって、足関節が自力では曲げられなくなる、「腓骨神経麻痺」を併発していたことが明らかとなりました。
そこで、これらの内容とともに、例外的に自力で曲げられない角度を以て、機能障害を認定すべきであることを説明し、認定手続に臨むこととしました。
2 逸失利益、休業損害の基礎となる収入額
逸失利益や休業損害の算定においては、前提として、被害者の方が1年間でどの程度、収入を得ることができる者であったかを明らかにする必要があります。
被害者は自営業者であり、確定申告もされていたのですが、事故の前年度に事業の拡大を狙って多額の投資をされました。そのため、事故の前年だけ、極端に収入が落ち込んでしまっていたのです。
結局、本件事故によって被害者の方は長期の休業を余儀なくされ、事業の拡大もできませんでしたから、賠償時に、事故前年度の実績を採用させるわけにはまいりません。申告・決算資料における収支を追跡し、以上の事情を詳細に立証するよう努めました。
- 解決のポイント
- 1 後遺障害等級の認定
狙いどおり、膝関節について第12級、足関節について第10級が認定され、併合第9級となりました。
2 訴訟への移行
その後、示談交渉を試みましたが、相手方は、
①被害者にも過失が40%ある
②膝・足関節のいずれの後遺障害についても、医学的に説明のつかないものである
③休業損害や逸失利益の算定基礎となる年収額は、事故前年度の申告実績を採用すべきである
との強硬な姿勢を示されました。当然、折り合いがつくはずもなく、裁判所でこれらを争うこととなりました。
3 裁判の結果
当方からは医師の意見書も交えて立証を尽くした結果、裁判所から以下のような和解案が提示され、裁判上の和解によって解決することとなりました。
(1) 被害者側の過失割合は30%にとどまる。
(2) 膝関節については疑いが残るが、少なくとも足関節の後遺障害に疑いはなく、賠償の基準が第10級を下回らないとして、慰謝料は第9級の基準、逸失利益は第10級の基準で計算する。
(3) 収入額は、事故前年度は事業拡大のための投資が影響しているため、これを除いた3年間の平均収入額を採用する。
弁護士のコメント
本件は、腓骨神経麻痺という特殊な神経症状によって可動域制限をもたらした事案であり、また、過失もテーマパークのロータリーという例の少ない交通事故でした。
そのため、裁判所の評価を事前に見込むことが難しくはありましたし、訴訟移行後の医学的な立証の応酬は熾烈を極めましたが、交通事故の被害者救済に注力した弁護士事務所として、各段階において弁護士とご依頼者様が努力を重ねたことで、結果に結びついたものと自負しております。